コンクリートライブラリ128鉄筋定着・継手指針[2007年版](土木学会)を読む。
指針の構成は、T共通編、U機械式定着編、V圧接継手編、W溶接継手編、X機械継手編に分かれます。
共通編を読んで学んでいきたいと思います。
T共通編
1章 総則 1.1適用の範囲 この指針は、一般の鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリートおよび鋼コンクリート複合構造物に用いる鉄筋の定着と継手の方法について、設計の考え方および施工と検査の原則を示す。 この指針に示していない事項は、土木学会コンクリート標準示方書によるものとする。 主に引張を受ける鉄筋が対象の指針であり、圧縮を受ける鉄筋の場合は要求性能と定着・継手特性をよく吟味して準用。 |
2.1鉄筋の定着 (1)鉄筋の定着は、軸方向鉄筋定着と横方向鉄筋定着に大別される。 軸方向鉄筋、横方向鉄筋は、本指針(案)に定める方法により、定着部が所要の性能を有していることを確認しなければならない。 (2)定着の種類および工法は、母材鉄筋の種類、直径、応力状態、定着位置、鉄筋の定着部に要求される性能等に応じて適切なものを選ばなければならない。 (3)定着に用いる材料は、JISなどの品質規格に適合していることを予め確認しなければならない。 |
2.2軸方向鉄筋の定着部の性能 2.2.1照査項目 定着部の照査項目は、構造物や部材の種類、要求性能、定着位置、母材鉄筋の種類、応力状態、荷重状態等に応じて、次に示す性能の中から適切に選定しなければならない。 ・静的耐力(=想定荷重に対して定着部が終局限界状態に至らない) ・耐震性能(=地震を想定した繰り返し荷重に対して、所要の耐力と変形性能を有する) ・対疲労性能(=設計上想定される高サイクル繰り返し荷重に対して、定着部が疲労限界状態に至らない) ・使用性(=想定される荷重に対して、使用限界状態に至らない) ・耐久性(=想定される環境条件に対して、所要の耐久性を有する) ・その他(低温に対する性能等)(=例えば極低温で使用される場合など) |
2.3軸方向鉄筋の定着体の性能 2.3.1評価項目 軸方向鉄筋の定着体の性能は次の各性能のうち、必要な項目について2.3.2に規定する方法で評価しなければならない。 (@)強度および抜出し量 (A)高応力繰返し性能 (B)疲労強度 (C)その他(低温に対する性能等) |
2.3.2評価方法 (1)定着体の性能は本指針第U編4章に示した試験体および試験方法によって適切に評価しなければならない。 (2)定着体の性能評価は下表に示す項目について行う。また、その場合の試験および記録は第U編4章に従うものとする。
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2.3.3強度および抜出し量 定着体の静的耐力は、強度と抜出し量を確認し、下表に基づき性能を評価するものとする。
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2.3.4高応力繰返し性能 地震等の作用による高応力繰返し荷重に対して、評価基準フックの性能と対比して、下表に基づき定着体の高応力繰返し性能を評価するものとする。
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2.3.5疲労強度 定着体の疲労強度は、設計で想定した繰返し回数と応力振幅に対して試験により確認することを原則とする。複数水準の応力振幅に対して疲労試験を行っている場合は、試験結果に基づくS-N線図を用いてもよい。 |
2.4横方向鉄筋の定着部の性能 2.4.1照査項目 定着部の照査項目は、構造物や部材の種類、要求性能、定着位置、母材鉄筋の種類、応力状態、荷重状態等に応じて、次に示す性能の中から適切に選定しなければならない。 (1)静的耐力 (2)耐震性能 (3)耐疲労性能 (4)耐久性 (5)その他(低温に対する性能等) |
2.4.2照査方法 (1)2.4.1に示す必要な性能毎に、定着部が所要の性能を有していることを、実験や解析等の適切な方法で照査することを原則とする。 (2)定着体が指針2.5に示す評価方法に従って、強度および抜き出し量、せん断補強性能、高応力繰り返し性能、靱性補強性能、疲労強度など設計で必要とされる評価項目において性能を満足する場合には、機械式定着は設計上、指針2.7に示す標準フックと同等として扱ってよい。 (3)横方向鉄筋の定着にコンクリートと鉄筋の付着力による付着定着とフックを併用する場合には、2.7の規定および「2002年版コン示 耐震性能照査編」の規定に従うものとする。 |
2.4.3静的耐力 (1)横方向鉄筋として機械式定着具を用いた場合のせん断補強性能は、機械式定着具を用いた部材が設計で想定した性能を有することを実験もしくは解析により確認するものとする。 (2)指針2.5.3に示す強度および抜き出し性能、および2.5.4に示すせん断補強性能を有する定着体を用いる場合は機械式定着を2.7に示す標準フックと同等として扱ってよい。 |
2.4.4耐震性能 (1)横方向鉄筋に機械式定着具を用いた部材の耐力、靱性および軸方向鉄筋の座屈抑止効果等の性能について、想定される繰り返し荷重に対して、所要の耐力と変形性能を有することを部材の交番繰り返し載荷実験により確認することを原則とする。 (2)2.5.5に示す高応力繰り返し性能と2.5.6に示す靱性補強性能を有する定着体を用いる場合は、機械式定着を2.7およびコン示 耐震性能照査編(2002年版)に示す標準フックと同等として扱って良い。 |
高応力繰返し性能 |
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性能の分類 | 性能の条件 |
あり | 下限を鉄筋の規格降伏強度の2%以下、上限を鉄筋の規格降伏強度の95%とした応力で静的に30回の繰り返し載荷を行った場合、30回目の上限応力時の抜き出し量が横方向鉄筋の評価基準フックの場合の値以下、かつ、30回目と1回目の上限応力時の抜き出し量の差が標準フックの場合の値以下 |
なし | 上記以外 |
靱性補強性能 |
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性能 | 性能の条件 |
あり | 終局変位(荷重-変位曲線の骨格曲線において、荷重が降伏荷重を下回らない最大の変位)まで評価標準フックと同等以上の性能を有している |
なし | 上記以外 |
2.4.5耐疲労性能 (1)定着部が設計で想定した高サイクル繰り返し荷重に対して所要の耐疲労性能を有していることを、対象とする部材の応力状態や配筋方法を再現した実験により確認することを原則とする。 (2)設計で想定される繰り返し荷重によって定着体が破壊しないことが、2.5.7に示す方法によって確認された場合は、機械式定着の疲労強度を標準フックと同等として扱ってよい。 |
2.4.6耐久性 (1)定着部が設計で所要の耐久性を有していることを、実験や解析等適切な方法で照査することを原則とする。 (2)定着する鉄筋のあき、かぶりがコン示 構造性能照査(2002年版)の規定を満足していれば、耐久性の照査はコン示に従って行って良い。 |
2.4.7構造細目 (1)部材最外縁のスターラップや帯鉄筋の定着には機械式定着を用いないことを原則とする。 (2)機械式定着具を有する横方向鉄筋は、部材最外縁の軸方向鉄筋に沿わせ、かつ軸方向鉄筋の外側に機械式定着具がくるように配置することを原則とする。 (3)疲労の影響を受ける部材の横方向鉄筋に、両端が異なる定着方法を用いる場合には、同じ側に種類の異なった定着方法を施さないことを原則とする。 |
2.5横方向鉄筋の定着体の性能 2.5.1評価項目 (1)強度および抜き出し量 (2)せん断補強性能 (3)高応力繰り返し性能 (4)靱性補強性能 (5)疲労強度 (6)その他(低温に対する性能等) |
2.5.3強度および抜出し量 定着体の静的耐力は、強度と抜出し量を確認し、下表に基づき性能を評価する。
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2.5.4せん断補強性能 機械式定着具を用いた横方向鉄筋のせん断補強性能は、横方向鉄筋に評価基準フックを用いた部材の剪断耐力と同等以上の耐力を有することを適切な実験により評価するものとする。
梁部材における主鉄筋に沿った定着破壊などは、強度および抜出し量の場合と破壊モードが異なるケースも考えられるため、実験で確認。 |
2.5.5高応力繰り返し性能 地震等の作用による高応力繰り返し荷重に対して、評価基準フックの性能と対比して、下表に基づき定着体の高応力繰り返し性能を評価する。
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2.5.6じん性補強性能 機械式定着を用いた横方向鉄筋の靱性補強性能は、横方向鉄筋に評価基準フックを用いた部材と同等以上の耐力および靱性を有することを所定の軸力を作用させた部材の交番繰り返し載荷試験により評価するものとする。
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2.5.7疲労強度 定着体の疲労強度は、設計で想定した繰り返し回数と応力振幅に対して試験により確認することを原則とする。複数水準の応力振幅に対して疲労試験を行っている場合は、試験結果に基づいてS-N線図を用いても良い。 |
2.6鉄筋フックの形状 2.6.1標準フック (1)標準フックとして、半円形フック、直角フックあるいは鋭角フックを用いる。 (2)半円形フックは、鉄筋の端部を半円形に180°折り曲げ、半円形の端から鉄筋直径の4倍以上で60mm以上まっすぐ延ばしたものとする。 (3)直角フックは、鉄筋の端部を90°折り曲げ、折り曲げてから鉄筋直径の12倍以上まっすぐ延ばしたものとする。 (4)鋭角フックは、鉄筋の端部を135°折り曲げ、折り曲げてから鉄筋直径の6倍以上で60mm以上まっすぐ延ばしたものとする。 |
2.6.2軸方向鉄筋のフック 軸方向鉄筋に普通丸鋼を用いる場合、常に半円形フックを用いなければならない。下表の値以上とする。
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2.6.3横方向鉄筋のフック (1)スターラップおよび帯鉄筋などの横方向鉄筋は、その端部に標準フックを設けなければならない。 (2)普通丸鋼を横方向鉄筋に用いる場合は、半円形フックとしなければならない。 (3)異形鉄筋をスターラップに用いる場合は、直角フックまたは鋭角フックを設けるものとする。 (4)異形鉄筋を帯鉄筋に用いる場合は、原則として半円形フックまたは鋭角フックを設けるものとする。 (5)横方向鉄筋フックの曲げ内半径は下表の値以上とする。ただし、φ≦10mmのスターラップは1.5φの曲げ内半径で良い。
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2.7鉄筋の付着定着およびフック付き定着 2.7.1一般 (1)機械的な方法によらずに鉄筋端部を定着するには、鉄筋端部をコンクリート中に十分埋め込んで、鉄筋とコンクリートとの付着力によって定着するか、フックを付けて定着しなければならない。 (2)普通丸鋼の端部には、必ず半円形フックを設けなければならない。 (3)スラブまたははりの正鉄筋の少なくとも1/3は、これを曲げ上げないで支点を超えて延長しなければならない。 (4)スラブまたははりの負鉄筋の少なくとも1/3は、反曲点を超えて延長し、圧縮側で定着するか、あるいは次の負鉄筋と連続させなければならない。 (5)折曲鉄筋は、その延長を正鉄筋または負鉄筋として用いるか、または折曲鉄筋端部をはりの上面または下面に所要のかぶりを残してできるだけ接近させ、はりの上面または下面に平行に折り曲げて水平に延ばし、圧縮側のコンクリートに定着するのがよい。 (6)スターラップは、正鉄筋または負鉄筋を取り囲み、その端部を圧縮側のコンクリートに定着しなければならない。 (7)帯鉄筋の端部には、軸方向鉄筋を取り囲んだ半円形フックまたは鋭角フックを設けなければならない。 (8)らせん鉄筋は、1巻半余分に巻き付けてらせん鉄筋に取り囲まれたコンクリート中に、これを定着するものとする。 (9)定着する鉄筋の端部は、指針の2.7.2に定める定着長算定位置において、2.7.3に定める定着長をとって定着しなければならない。 (10)(1)から(9)の規定と異なる付着力による定着およびフックを付けた定着方法を用いる場合には、所定の定着性能を満足させることを軸方向鉄筋については2.2、横方向鉄筋については2.4に定める方法によって確かめなければならない。 |
2.7.2定着長算定位置 曲げ部材における軸方向引張鉄筋の定着長の算定は、以下の(1)〜(4)に示した位置を起点として行うものとする。ここでIsは一般に部材断面の有効高さとしてよい。ただし、急激な鉄筋量の変化は避ける。 (1)曲げモーメントが極値をとる断面からIsだけ離れた位置。 (2)曲げモーメントに対して計算上鉄筋の一部が不要となる断面から、曲げモーメントが小さくなる方向へIsだけ離れた位置。 (3)柱の下端では、柱断面の有効高さの1/2かつ鉄筋径の10倍だけフーチング内側に入った位置。 (4)片持ち梁等の固定端では、原則として引張鉄筋の端部が定着部において上下から拘束されている場合には、断面の有効高さだけ定着部内に入った位置。 |
2.7.3鉄筋の定着長 (1)鉄筋の定着長loは、基本定着長ld以上でなければならない。配置される鉄筋量Asが計算上必要な鉄筋量Ascより大きい場合、次式により定着長loを低減して良い。 lo≧ld*(Asc/As) lo≧ld/3、lo≧10φ φ:鉄筋直径 (2)曲がった鉄筋の定着長のとりかたは、以下とする。 曲げ内半径が鉄筋直径の10倍以上の場合は、折り曲げた部分を含み、鉄筋の全長を有効とする。 曲げ内半径が鉄筋直径の10倍以下の場合は、折り曲げてから鉄筋直径の10倍以上をまっすぐに延ばした時に限り、直線部分だけを有効とする。 (3)引張鉄筋は、引張応力を受けないコンクリートに定着するのを原則とする。ただし、以下の(a)(b)のいずれかを満足する場合には、引張応力を受けるコンクリートに定着しても良い。この場合、引張鉄筋の定着部は計算上不要となる断面から(ld+ls)だけ余分に延ばさなければならない。ld:基本定着長。lsは一般に部材断面の有効高さとしてよい。 (a)鉄筋切断点から計算上不要となる断面までの区間では、設計剪断耐力が設計剪断力の1.5倍以上あること。 (b)鉄筋切断部での連続鉄筋による設計曲げ耐力が設計曲げモーメントの2倍以上あり、かつ切断点から計算上不要となる断面までの区間で、設計剪断耐力が設計剪断力の4/3倍以上あること。 (4)スラグまたは梁の正鉄筋を、端支点を超えて定着する場合、その鉄筋は支承中心からlsだけ離れなければならない。lsは一般に部材断面の有効高さとしてよい。 (5)折り曲げ鉄筋をコンクリートの圧縮部に定着する場合の定着長は、フックを設けない場合は15φ以上、フックを設けた場合は10φ以上とする。φ:鉄筋直径。 |
2.7.4基本定着長 (1)引張鉄筋の基本定着長ldは、下式によって求めても良い。ただし20φ以上とする。 ld≧α(fyd/4fbod)φ φ:主鉄筋の直径 fyd:鉄筋の設計引張降伏強度 fbod:コンクリートの設計付着強度で、γcは1.3としてfbokより求めて良い。ただし、fbod≦3.2N/mm2 α=1.0(kc≦1.0の場合) =0.9(1.0<kc≦1.5の場合) =0.8(1.5<kc≦2.0の場合) =0.7(2.0<kc≦2.5の場合) =0.6(2.5<kc5の場合) ここにkc=(c/φ)+(15Aω/sφ) c:主鉄筋の下側のかぶり値と定着する鉄筋のあきの半分のうち小さい方 Aω:仮定される割裂破壊断面に垂直な横方向鉄筋の断面積 s:横方向鉄筋の中心間隔 (2)定着を行う鉄筋が、コンクリートの打ち込みの際に、打ち込み終了面から300mmの深さより上方の位置で、かつ水平から45°以内の角度で配置されている場合は、(1)により求めるldの1.3倍の基本定着長とする。 (3)圧縮鉄筋の基本定着長は、(1)、(2)により求まるldの0.8倍として良い。 (4)引張鉄筋に標準フックを設けた場合には、基本定着長ldより10φだけ減じてよい。ただし、鉄筋の基本定着長ldは、少なくとも20φ以上とするのがよい。ここにφは鉄筋直径である。 |
2.8施工 定着部の施工は、定められた施工要領に従って、設計図書に示された詳細を確実に反映するように行わなければならない。 |
2.9検査 監督員は、適切な時期に定められた項目について定着部の検査を行い、その品質を確認しなければならない。 |
3.鉄筋の継手 3.1一般 (1)継手部は、3.2に定める方法によって所要の性能が得られることを確かめなければならない。 (2)鉄筋継手部は、母材鉄筋の種類、直径、応力状態、継手位置、継手に要求される性能等に応じて適切なものを選ばなければならない。 (3)鉄筋継手に用いる材料は、JISなど品質規格に適合していることを予め確認しなければならない。 (4)鉄筋継手を用いるに当たっては、施工および検査に起因する信頼度を考慮しなければならない。 (5)鉄筋継手位置は、応力の大きい断面を出来るだけ避けるのがよい。 (6)鉄筋継手位置は相互にずらし、出来るだけ一断面に集めないのがよい。 |
3.2継手部の性能照査 3.2.1照査項目 継手部の照査項目は、構造物や部材の種類、要求性能、継手位置、母材鉄筋の種類、応力状態、荷重状態に応じて、次に示す性能の中から適切に選定しなければならない。 (@)静的耐力 (A)高応力繰り返し性能(耐震性能) (B)高サイクル繰り返し性能(耐疲労性能) (C)使用性 (D)耐久性 (E)その他(低温に対する性能等) |
3.2.2照査方法 (1)3.2.1に示す必要な性能毎に、継手部が所要の性能を有していることを、実際の施工および検査に起因する信頼度の影響を考慮し、適切な実験や解析等で照査することを原則とする。 (2)継手部に作用する荷重状態が明確な場合など、継手単体の性能照査によって間接的に継手部の性能を評価できる場合は、3.3に示す方法に従って強度、剛性、伸び能力、すべり量、疲労強度に対して継手単体の性能を評価し、3.4に示す施工および検査に起因する信頼度を考慮した上で継手部の性能を照査して良い。 (3)重ね継手を用いる場合には、コン示構造性能照査編(2002年版)9.6.2重ね継手に従わなければならない。なお、軸方向鉄筋の重ね継手の端部に機械式定着体を設けた場合には、その効果、信頼性に応じて適切に重ね継手を減じても良い。 |
継手部の性能 |
条件 |
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軸方向鉄筋 |
横方向鉄筋 |
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静的耐力(3.2.3) | 引張降伏強度の設計値による照査(3.2.3の表に示す) | A級以上かつU種以上 |
高応力繰り返し性能(3.2.4) | ・継手集中度が1/2以下の場合SA級かつU種以上 ・継手集中度が1/2以上の場合SA級かつT種以上 |
A級以上かつU種以上 |
高サイクル繰り返し性能(3.2.5) | 疲労強度の設計値による照査(3.2.4の表に示す) | 同左 |
使用性(3.2.6) | B級以上 | B級以上 |
耐久性(3.2.7) | B級以上 | B級以上 |
3.2.3静的耐力 (1)継手部が所要の静的耐力を有していることを、実際の施工および検査に起因する信頼度の影響を考慮し、適切な実験や解析等で照査しなければならない。 (2)軸方向鉄筋に継手を設ける場合、継手の引張降伏強度の設計値fjdを定め、コン示構造性能照査編(2002年版)6章に準ずる方法で継手部の静的耐力に対する照査を行って良い。fjdは、3.3.3に示す特性値fjk、3.4に示す施工および検査に起因する信頼度、継手の集中度および母材鋼材の材料係数γsを用いて下表に従って求める。継手の集中度の判定には、継手相互の鉄筋軸方向の距離が継手長さに鉄筋径の25倍をくわえた長さ以上確保されていれば、それらの継手は互いに同一断面にないと考えて良い。3.2.2で示す重ね継手はU種としてよい。 表-継手の引張降伏強度の設計値fjd
(3)塑性ヒンジ部の軸方向鉄筋にやむを得ず継手を設ける場合は、(2)の方法によらず、高応力繰り返し性能の照査を静的耐力の照査に代えて良い。 (4)継手を含む部材の剪断に対する性能を照査する際には、鉄筋の継手が部材の剪断強度に及ぼす影響を適切に考慮しなければならない。ただし、3.3.3に示すA級以上かつ3.4に示す施工および検査に起因する信頼度がU種以上の継手または実験等により剪断に対する力学的性能が確認されたものを使用する場合、その影響を無視して良い。 |
3.2.4高応力繰り返し性能 (1)継手部が、所要の高応力繰り返し性能を有していることを、実際の施工および検査に起因する信頼度の影響を考慮し、適切な実験や解析等で照査しなければならない。 (2)(@)〜(B)に従って継手部の高応力繰り返し性能を照査して良い。 (@)軸方向鉄筋に設けられた継手の集中度が1/2以下かつ3.3.3に示すSA級継手を使用し、3.4に示す施工および検査に起因する信頼度がU級以上である場合は、前表-継手の引張降伏強度の設計値fjdに示す継手の引張降伏強度の設計値を用いて安全性、耐震性に対する構造物の照査を行わなければならない。ただし曲げ破壊先行型部材の場合は、母材強度を用いる照査も併せて行わなければならない。 (A)軸方向鉄筋に設けられた継手の集中度が1/2を超える場合は施工や検査の信頼性を考慮可能な適切な方法によって、継手部の高応力繰り返し性能を照査しなければならない。ただし、3.4に示す施工および検査に起因する信頼度がT種でかつ3.3.3に示すSA級継手は、十分な信頼性を有していることから、継手の集中度が1/2を超える場合にも(@)と同様な方法で照査を行って良い。 (B)横方向鉄筋に継手を設ける場合、継手が部材の高応力繰り返し性能におよぼす影響を適切に考慮しなければならない。ただし、3.3.3に示すA級以上の継手を使用し、3.4に示す施工および検査に起因する信頼度がU種以上である場合、母材と同等の性能を有するとして安全性および耐震性能に対する構造物の照査を行って良い。 表-高応力繰り返し性能の照査方法
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3.2.5高サイクル繰り返し性能 (1)継手部が所要の高サイクル繰り返し性能を有していることを、実際の施工および検査に起因する信頼度の影響を考慮し、適切な実験や解析等で照査しなければならない。 (2)継手の疲労強度の設計値fjrdを定め、コン示(2002年版 構造性能照査編)8章に準ずる方法で高サイクル繰り返し性能に対する照査を行って良い。疲労強度の設計値fjrdは、3.3.4に示す疲労強度fjrk、3.4に示す施工および検査に起因する信頼度、継手の集中度、および母材鋼材の材料係数γsを用いて下表に従って求めるものとする。 表-継手の疲労強度の設計値fjrd
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3.2.6使用性 (1)継手部が所要の使用性を有していることを、実際の施工および検査に起因する信頼度の影響を考慮し、適切な実験や解析等で照査しなければならない。 (2)軸方向鉄筋に設けられた継手の集中度が1/2以下の場合、あるいは横方向鉄筋に継手を設ける場合で、継手部が3.2.3に示す静的耐力を有し、かつ3.3.3に示すB級以上の継手が用いられている場合は、コン示(2002年版 構造性能照査編)7章に準ずる方法で使用性に対する照査を行って良い。 (3)軸方向鉄筋に設けられた継手の集中度が1/2を超える場合は、継手部近傍に変形が集中する恐れがあるので、その影響を適切に考慮しなければならない。 |
3.2.7耐久性 (1)継手部が所要の耐久性を有していることを、実際の施工および検査に起因する信頼度の影響を考慮し、適切な実験や解析等で照査しなければならない。 (2)軸方向鉄筋に設けられた継手の集中度が1/2以下の場合、あるいは横方向鉄筋に継手を設ける場合で、継手部のかぶりがコンクリート標準示方書の規定を満足すると共に、3.3.3に示すB級以上の継手が用いられている場合は、コン示(2002年版 構造性能照査編)2章に準ずる方法で耐久性に対する照査を行って良い。 (3)軸方向鉄筋に設けられた継手の集中度が1/2を超える場合は、継手部あるいはその近傍におけるひび割れが耐久性に及ぼす影響を適切に考慮しなければならない。 |
3.2.7構造細目 (1)継手単体と隣接する鉄筋との”あき”、または継手単体相互の”あき”は、原則として粗骨材最大寸法以上とする。 (2)鉄筋を配置した後に継手を施工する場合には、継手施工用の機器等が挿入できる”あき”を確保しなければならない。 (3)径の異なった鉄筋を継ぐ場合には、以下によるものとする。 (@)継手の集中度が1/2以下の場合には、原則として異なった径の鉄筋の断面積比を1/2以上とする。 (A)継手の集中度が1/2を超える場合には、原則として異なった径の鉄筋の断面積比を3/4以上とする。 (4)材質の異なった鉄筋を継ぐ場合には、材質の相違が継手性能に悪影響をおよぼさないことを確かめておかねばならない。 (5)繰り返し荷重による疲労の影響を受ける部材には、同一断面に種類の異なった継手を併用しないのがよい。 (6)耐震性能照査を行う部材の鉄筋の継手は、コン示(2002年版 耐震性能照査編)の構造細目に従うものとする。 |