[07]コンクリートの品質

 コンクリートは、品質のばらつきが少なく、作業に適したワーカビリティーを有すると共に、硬化後は所要の強度、耐久性、水密性、ひび割れ抵抗性を持つこと。

所要の性能を有するコンクリート構造物を造るためには、要求性能を付与でき、かつ、適切な施工性能を持つコンクリートを用いる必要がある。コンクリートに求められる基本的な品質はこの原則に基づく。

均質性
 材料の品質および製造のばらつきが少なく、品質が安定していなければならない。
ばらつきが大きいと所定の品質のコンクリートを安定して供給することが困難化。構造物の性能に悪影響を及ぼす。
バッチ間の変動を少なくする。骨材表面に付着する微粒分の量、細骨材の表面水率、骨材粒度等は変動し易く、コンクリートの品質に著しい影響を及ぼすので、これらの変動を最小とする管理を行う。

ワーカビリティー
 施工条件、構造条件、環境条件に応じて、コンクリートの運搬、打ち込み、締固め、仕上げ等の作業に適すること。

ワーカビリティーとしての充てん性
 1)充てん性は、振動締固めを加えた場合の流動性と材料分離抵抗性との相互作用で得られる性能で、両者のバランスを考慮する。
流動性の指標はスランプ、材料分離抵抗性の指標は単位セメント量あるいは単位粉体量を考える。
 2)充てん性は、構造物の種類、部材の種類および大きさ、鋼材量や鋼材の最小あき等の配筋条件と共に、場内運搬の方法や締固め作業方法、等を考慮して、作業の出来る範囲で適切に決める。
 3)コンクリートを円滑かつ密実に型枠内に打ち込むための流動性は、打ち込みの最小スランプを確保することによって得られるものとする。

流動性と材料分離抵抗性は、単位水量と単位セメント量あるいは単位粉体量との関係はもとより、セメントの種類、粉体の種類、骨材粒度・粒形、混和剤の種類等によっても影響を受ける。
材料分離抵抗性=一般に塑性粘度と降伏値等のレオロジー定数によって数値化出来る性能。
単位粉体量=コンクリート単位容積中に含まれるセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末等の粉体の総計。材料分離に起因する初期欠陥を防止するため、少なくとも270kg/m3以上を確保し、300kg/m3を推奨。
水和熱が問題となる場合は、活性の低いフライアッシュや石灰微粉末を利用。
反応性を有する単位セメント量や単位結合材量は、水和熱、強度、耐久性等との関係を示す指標。
細骨材率を適切に設定するのは、材料分離抵抗性向上に有効。

スランプはコンクリートの製造から打ち込みまでの時間経過や運搬等で変化する。充てん性確保のための流動性については、打ち込みの最小スランプを基準にする。そのためには、”練上り”、”荷卸し”の各段階のスランプを定める。練上りスランプは、現場までの運搬におけるスランプ低下を考慮。荷卸しスランプは、現場内でのスランプ低下を考慮。
打ち込み箇所において最適な充てん性となるように配合設計を行う。
所定の打ち込みの最小スランプに対して、練上りや荷卸しの目標スランプが相当大きくなる場合は、製造管理、品質管理、受け入れ検査で支障が生じないように適切に配合を定める。
レディーミクストコンクリートを用いる場合は、打込みの最小スランプを満足する荷卸しスランプを定め、これを指定スランプとするのがよい。

ワーカビリティーとしてのポンプ圧送性
 1)コンクリートポンプで圧送する場合には、フレッシュコンクリートは作業に適するスランプを有していなければならない。
 2)輸送管内で閉塞が生じないように、適度なポンプ圧送時の分離抵抗を確保しなければならない。

施工条件に応じたスランプ低下の目安(2007コン示施工編より)

条件

スランプの低下量

 ポンプ圧送距離(水平換算)

最小スランプが12cm未満の場合

最小スランプが12cm以上の場合

150m未満(バケット運搬を含む)

150m以上300m未満

1cm

300m以上500m未満

2cm3cm

1cm

500m以上

既往の実績または試験施工の結果に基づき設定する

参考:日平均気温が25℃を超えるとき(暑中コンクリートとしての取り扱いが必要なとき)は、上記の値にさらに1cmを加えたスランプの低下を見込むと良い。

ワーカビリティーとしての凝結特性
 1)フレッシュコンクリートの凝結特性は、締固め、打重ね、仕上げ等の作業に適するものでなければならない。
凝結特性は、凝結の始発時間と終結時間で評価される。
一般のコンクリート構造物の施工においては、JIS A 1147 「コンクリートの凝結時間試験方法」による凝結時間が、始発時間5〜7時間、終結時間6〜10時間程度。

強度
 1)コンクリートの強度は、所定の材齢において、設計基準強度を、指定された割合以上の確率で下回ってはならない。
 2)コンクリートの強度は、一般には材齢28日における標準養生供試体の試験値で表すものとする。
 3)コンクリートの圧縮強度試験は JIS A 1108 、引張強度試験はJIS A 1113 によるものとする。供試体はJIS A 1132 により作成。
 4)必要に応じて、施工時の各段階で必要となるコンクリートの強度発現特性を確認しなければならない。

試験値がそれを下回る確率がある一定の値になることを保証される値を材料強度の特性値と定義し、この値を設計基準強度として用いる。
試験値が設計基準強度を下回る確率は、一般には5%以下を用いる。
単位セメント量の多い高強度コンクリートでは、初期に高温履歴を受けることによって以降の強度発現が低下する場合がある。
施工の途中段階の強度確認が必要になる例=型枠・支保工の取り外し、プレストレストコンクリートにおけるPC鋼材の緊張等の作業時期を早期に設定する場合等。このばあい、打ち込み温度、環境温度等の影響を考慮して強度発現特性を確認する。

耐久性
 1)コンクリートは、構造物の供用期間中に受ける種々の物理的、化学的作用に対して十分な耐久性を有すると共に、鋼材を保護する性能を有していなければならない。

コンクリート自体の耐久性を阻害する要因には、凍害、化学的侵食、アルカリシリカ反応等がある。
コンクリート中の鋼材腐食については、主として塩害と中性化、それらを促進させるひび割れが関係する。

コンクリートの耐久性
 1)コンクリートに使用する材料は、コンクリートの所要の耐久性を損なうものであってはならない。
 2)コンクリートの水セメント比は、原則として65%以下とする。
 3)コンクリートは、原則としてAEコンクリートとする。

供用期間中にアルカリシリカ反応が有害なレベルに達しないようにするには、
1.コンクリート中のアルカリ総量の抑制、
2.アルカリシリカ反応抑制効果を持つ混合セメントB種の使用、
3.アルカリシリカ反応試験で区分A「無害」と判定される骨材の使用、
のどれかを採用する。
海洋環境や凍結防止剤の使用地域等、外部からのアルカリ侵入が避けられない場合で、使用材料によるアルカリ低減対策のみでは対策が不十分と判断される場合には、表面被覆工法の適用等も検討する。

鋼材を保護する性能
 1)コンクリートは、その内部に配置される鋼材が供用期間中所定の機能を発揮できるよう、鋼材を保護する性能を有していなければならない。
 2)練混ぜ時にコンクリート中に含まれる塩化物イオン総量は、原則として0.30kg/m3以下とする。

鋼材に対するコンクリートの保護作用が失われる原因は鋼材表面の不動態被膜の破壊であり、中性化によるコンクリートのアルカリ性低下とコンクリート中の塩化物イオンが不動態被膜破壊の主な原因である。
中性化深さが鋼材腐食発生限界深さまで進行しないこと、コンクリート中の塩化物イオン量が鋼材位置において不動態被膜を破壊する限界を超えないこと。
設計かぶりに応じて適切な物質移動抵抗性をコンクリートに付与できるよう材料と配合を選定する必要がある。水セメント比は設計においてかぶりと共に設定され、所要の耐久性を有することが照査されるので、原則、照査に用いた値以下の水セメント比とする。

水密性
 1)コンクリートは、透水により構造物の機能が損なわれないよう、所要の水密性を有していなければならない。

透水係数は、基本的にコンクリートの密実性に依存。透水係数が小さいコンクリートは耐久性を確保するうえからも望ましい。
透水係数は、セメント硬化体自体の緻密さや空隙の連続性等による空隙構造、骨材周辺に形成される粗い組織の遷移帯の性質等に支配される。
既往実績から、水セメント(結合材)比55%以下であれば一般のコンクリートに求められる水密性は確保される。

ひび割れ抵抗性
 1)コンクリートは、沈下ひび割れ、プラスティック収縮ひび割れ、温度ひび割れ、自己収縮ひびわれあるいは乾燥収縮ひび割れ等の発生ができるだけ少ないものでなければならない。

沈下ひび割れ防止には、減水効果を有する混和材料の使用、単位水量の少ない配合が有効で、ブリーディングの抑制、タンピング、再振動を行うことも効果がある。
プラスティック収縮ひび割れは、コンクリートを打ち込んだ後に表面からの急速な乾燥を防止すれば一般に防ぐことが出来る。ブリーディングの少ない高強度コンクリート等では、水分逸散防止が重要。
[設計編]では既往実績や資料がない場合、設計で用いるコンクリートの収縮ひずみの最大を1200μとしている。