[07]寒中コンクリート

(1)日平均気温が4℃以下になることが予想されるときは、寒中コンクリートとしての施工を行わなければならない。
(2)寒中コンクリートの施工にあたっては、コンクリートが凍結しないように、また、寒冷下においても所要の品質が得られるように、材料、配合、練混ぜ、運搬、打込み、養生、型枠および支保工等について適切な措置をとらなければならない。

初期凍害を受けたコンクリートは、その後適切な養生を行っても強度を回復することはなく、耐久性、水密性等が著しく劣る。
5℃程度以下の低温度にさらされると、凝結および硬化反応が相当遅延する。早期に施工荷重を受ける構造物では、ひび割れ、残留変形等の問題が生じやすくなる。
コンクリート露出部、メタルフォーム型枠面に直接風が当たるとコンクリート温度はさらに低下する。
コンクリートの凍結温度は、およそ-2.0℃から-0.5℃。

材料
 1)セメントはNおよびBBを標準とする。
 2)凍結した骨材または氷雪の混入している骨材は、そのまま用いてはならない。
 3)混和剤は、低温で使用した場合にも安定した品質のコンクリートが得られるものを選ばなければならない。防寒剤、耐寒剤などのJISまたは土木学会基準に品質が定められていない混和剤は、その品質とこれを用いたコンクリートの品質を十分確認した上で使用しなければならない。
 4)材料を加熱する場合、水または骨材を加熱することとし、セメントはどんな場合でも直接熱してはならない。骨材の加熱は温度が均等で、かつ乾燥しない方法によらなければならない。
NおよびBBを用いるのを標準とするのは、低温下で養生しても初期材例における強度発現の遅延が小さいから。
凍結した骨材または氷雪の混入している骨材は、そのまま用いると練上がりコンクリートの温度低下や単位水量の変動を招きやすい。
JIS A 6204「コンクリート用化学混和剤」もしくは土木学会基準。
高性能AE減水剤を使用したコンクリートは、コンクリート温度が低い場合には高い場合よりも練上げスランプが小さくなる反面、時間経過と共にスランプが大きくなることがあるので注意。
温度の高いセメントと水を直接接触させると、急結してコンクリートに悪影響を及ぼす恐れがある。
骨材を65℃以上に熱するとセメントを急結させる恐れがある。一般に40℃以下にしておけば心配ない。骨材加熱方法としては蒸気利用が管理面で比較的容易。

配合
 1)寒中コンクリートはAEコンクリートとすることを原則とする。
 2)単位水量は、初期凍害を防止するため、所要のワーカビリティーが保てる範囲内で出来るだけ小さくしなければならない。
寒冷地など長期的な凍結融解作用を受けるような場合には所要強度を満足することを確認の上6%程度の空気量とするのがよい。

練混ぜ
コンクリートの温度低下は、1時間につき、コンクリート温度と周囲の温度との差の15%程度。
T2=T1-0.15*(T1-T0)t
T0:周囲の温度(℃)
T1:練り混ぜたときのコンクリートの温度(℃)
T2:打込み終了時のコンクリート温度(℃)
t:練り混ぜてから打込み終了時までの時間(h)
高温の水とセメントが接触するとセメントが急結するおそれがあるので、まず温水と粗骨材、次に細骨材を入れてミキサ内の材料温度が40℃以下になってからセメントを投入するのがよい。

運搬および打込み
プラントから現場までの運搬、現場内待機、荷卸しから打込み終了までの各過程に要する時間とその間のコンクリート温度低下を事前に確認し必要な対策を取る。
輸送管の温度が低すぎると、管内壁にモルタルが凍結付着する。
気象条件が厳しい場合や薄い部材では最低打込み温度は10℃を確保する必要がある。
厚い部材は、5℃を下回らない範囲で打込む。打ち込み温度を上げすぎると、水和熱で温度応力ひび割れが発生。

養生
激しい気象作用を受けるコンクリートは下表に示す圧縮強度が得られるまでコンクリート温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上に保つことを標準とする。
激しい気象作用を受けるコンクリートの養生終了時の所要圧縮強度の標準(N/mm2)
 構造物の露出状態   薄い断面  普通の断面  厚い断面
 連続して、あるいはしばしば水で飽和される場合    15     12    10
 普通の露出状態にあり、上記に属さない場合     5      5     5


以下は2002版のメモ--------------

 日平均気温が4℃以下になることが予想されるときは寒中コンクリートとしての施工をおこなう。

 寒中コンクリートの施工では以下の事項を特に守らなければならない。
・凝結硬化の初期に凍結させない
・暖かくなるまでに受ける凍結融解作用に抵抗できる
・施工期間中の荷重に対して十分な強度を持つ

 寒中コンクリートの施工方法は、一般的に、以下とする。
・4〜0℃:簡単な注意と保温
・0〜-3℃:水または水+骨材の加熱と保温
・-3℃以下:水+骨材の加熱と保温と給熱

 寒中コンクリートでは、コンクリートの練り混ぜ開始から打ち込むまでの時間を短くし、コンクリートの温度低下を防ぐ。
コンクリートの打ち込み温度は5〜20℃の範囲とする。
打ち込まれたコンクリートは、露出面が外気に長時間さらされることのないようにしなければならない。
コンクリートポンプを使用する場合、配管が冷却し過ぎていると管内壁にモルタルが凍結付着する。これを防ぐため管路の保温、打ち込み前の温水による予熱をおこなうと共に、作業中断により冷却が起きないようにする。

 気象条件が厳しい場合や部材が薄い場合の最低打ち込み温度は10℃程度を確保し、部材が厚い場合は水和熱に起因する温度応力によるひび割れが懸念されるので5℃を下回らない範囲とする。

 コンクリート打ち込み終了後、養生を始めるまでの間は、コンクリートの表面の温度が急冷されないようにシート等で覆い、特に風を防ぐ。
 施工にあたってはコンクリート温度及び雰囲気温度を測定し、必要により施工計画を変更する。

 圧縮強度5N/mm2が得られるまでは5℃以上、その後2日間は0℃以上に保つことを原則とする。激しい気象作用を受けるコンクリートは、所要の圧縮強度(コンクリート標準示方書に標準として示される)が得られるまでコンクリート温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上に保つことを標準とする。

    激しい気象作用を受けるコンクリートの養生終了時の所要圧縮強度の標準(N/mm2)

 構造物の露出状態   薄い断面  普通の断面  厚い断面
 連続して、あるいはしばしば水で飽和される場合    15     12    10
 普通の露出状態にあり、上記に属さない場合     5      5     5


 コンクリートに給熱する場合、急激に乾燥させたり局部的に熱したりしない。
 型枠は保温性の良いものを用いるのを原則とする。木製型枠は、鋼製のものに比べ熱伝導率が小さく保温性が大きい。

熱伝導性の参考値
 合板:8(W/m2℃)
 メタル:14
 散水1cm以内の湛水:14
 1cm以上の10cmまでの湛水:8
 むしろ:8
 シート:6
 養生マット(湛水、シートを含む):5
 発泡スチロール50cm厚さ:2

 型枠の取り外しは、コンクリートの温度を急激に低下させないようにおこなわなければならない。
部材が厚い構造物では、コンクリート内部の温度は水和熱により高温になっているので、型枠取り外しによって急冷すると大きな温度差を生じ、ひび割れが発生するおそれがある。
 養生が終わって24時間の間に許容できる温度下降の最大値を、断面が薄い場合22〜28℃、厚い場合17℃と規定している例がある。