2002版のメモ-------------------------------------------------

マスコンクリート
 マスコンクリートの施工に当たっては、所要の性能及び機能を有するコンクリート構造物が得られるように、事前にセメント水和熱による温度応力及び温度ひび割れに対する検討をおこなわなければならない。

 マスコンクリートとして取り扱うべき構造物の部材寸法は、おおよその目安として、広がりのあるスラブでは厚さ80〜100cm以上、下端が拘束された壁では厚さ50cm以上と考えて良いが、プレストレストコンクリート構造物などの富配合コンクリートでは、より薄い部材でもマスコンクリートに準じた扱いが必要となる。

 マスコンクリートの場合、一般に大量のコンクリートを連続的に施工することが多く、数カ所の生コン工場から購入することもある。この場合、原則としてセメント及び混和剤メーカーは1社とし、骨材も可能であれば同一産地もものを用いるのが良い。あらかじめ試験練りをおこない、混合による影響のないことを確認してから施工する。特に混和剤においては、相性の良し悪しが認められるものもあり、十分注意しておかねばならない。

 マスコンクリートのひび割れ防止、あるいは発生するひび割れの位置、幅、間隔を制限することを含めたひび割れ制御は、マスコンクリートの施工において特に留意しなければならない。
 温度ひび割れを制御するためには、
・セメントの種類
・材料及び配合の適切な選定
・コンクリート製造時の温度調節
・打ち込み区画の大きさとリフト高さ
・継目の位置と構造
・打ち込み時間間隔
・型枠の材料や構造
・養生方法
など、製造及び施工全般にわたる深い配慮が必要である。

 温度ひび割れを防止あるいは制御する方法としては、
・ひび割れ誘発目地
・パイプクーリング
・膨張コンクリートの使用
・ひび割れ制御鉄筋
などがあるが、その効果と経済性等を総合的に判断する。

 マスコンクリートを分割して打ち込む場合、新コンクリートは、旧コンクリートの拘束を受けるため、温度変化に応じて応力が発生する。この応力は新旧コンクリートの有効ヤング係数及び温度差が大きくなるほど増大するので、新旧コンクリートの打ち込み時間間隔をあまり長くしないほうが良い。
一方、岩盤などの拘束度の大きいものの上に数層にわたって打ち継いでいく場合、打ち込み時間間隔を短くしすぎるとコンクリート全体の温度が高くなり、ひび割れ発生の可能性が大きくなる。このように、打ち込み時間間隔は温度応力に大きく影響を与えるので、その設定はブロック割りやリフト割り、対策方法とも合わせて十分検討しなければならない。

 マスコンクリートの打ち込み温度は、あらかじめ計画された温度を超えてはならない。特に気温の高い時期の炎天下での打ち込みには十分注意する。

 高炉セメントの発熱性状は、温度が高いほど促進されるので、打ち込み時のコンクリート温度を出来るだけ低くする。

マスコンクリートの養生
 マスコンクリートの養生では、通常のコンクリート養生に加えて、温度ひび割れに関する検討から定まった養生方法を確実に実施する。
・コンクリート部材内外の温度差が大きくならないようにする
・部材全体の温度下降速度が大きくならないようにする
・コンクリート温度をできるだけ緩やかに外気温に近づける。
などの配慮をし、必要に応じてスチロール、シートで覆う。

 マスコンクリートの打ち込み後の温度制御方法の一つとしてパイプクーリングがあり、以下を目標とする。
・初期材齢における内部温度の最大値を下げる
・部材全体の平均温度を早い時期に構造物のおかれる平均温度まで下げる
 パイプクーリングは、外径25mm程度の薄肉鋼管をコンクリートに埋め込み、パイプに冷水、河川水、空気を通してコンクリートを冷却する。コンクリート温度と通水温度の差は20℃程度以下を目安とする。

マスコンクリートの型枠
 マスコンクリートでは放熱による温度上昇の抑制範囲が限られている。打ち込み後に大幅な気温低下が予想される場合や冬期においては、メタル枠を用いると内部と表面部の温度差が大きくなるので使用せずに保温性の良いものを使う。保温性の良い型枠を使う場合は、通常より型枠存置期間を長くするのを原則とし、脱枠後もシート等で覆って急冷を防止する。

ひび割れ誘発目地
 マッシブな壁状構造物の長手方向に一定間隔(一般に4〜5m程度)で断面減少部分(断面減少率20%以上とする)を設け、その部分にひび割れを誘発し、他の部分での発生を防止すると共に、ひび割れ箇所での事後処理を容易にする方法。
ひび割れ誘発目地は、構造上の弱点部にもなりうるので、その構造、位置等は実績なども参考にして適切に定める。