[07]施工計画

 (1) 設計図書に示されたコンクリート構造物を構築するために、適切な施工計画を立案しなければならない。
 (2)施工計画は、工事の要件を満足すると共に、設計図書に示されたコンクリート構造物が構築できることを確認し、発注者に承認を得なければならない。

 適切な施工計画を立案し、それに従って確実に施工を行うことは、設計で定めた諸性能(安全性、使用性、復旧性、耐久性等)を有するコンクリート構造物を構築するために必要不可欠な要件。
 施工計画では、構造物の構造条件、現場の環境条件および施工条件を勘案し、作業の安全性、環境負荷への配慮、全体工程、施工方法、コンクリート製造方法、コンクリートの施工性能、コンクリートの配合、品質管理、検査および環境・安全等の計画について検討する。
環境保全計画は、環境関連法令や基準を遵守しなければならない。環境負荷最小で計画立案。

 検討項目の例

その内容の例

 1.コンクリートの運搬・受け入れ計画  生コン車の配車・運行計画、場内道路、現場試験の場所、スランプ・空気量・単位水量・水セメント比などの配合検査
 2.現場内運搬計画  運搬方法、供給能力、予備のポンプ車
 3.打ち込み計画  施工体制、打ち重ね時間、時間当たり打ち込み量、安全性
 4.締め固め計画  振動機の種類・数量、予備の機械、員数、交代
 5.仕上げ計画  仕上げをする者の技量、仕上げ時期、仕上げ精度、仕上げ機械・器具
 6.養生計画  養生開始時期、養生方法、期間、養生装置、養生管理責任者の確認
 7.打ち継ぎ計画  打ち継ぎ方法、処理方法、処理機械、打ち継ぎ時期
 8.鉄筋工の計画  鉄筋径、ピッチ、かぶりの確認方法、組み立て方法、鉄筋の種類、加工方法、鉄筋工の技能の確認
 9.型枠および支保工の計画  型枠計算、型枠材料、支保材料、型枠設計者、型枠と支保工の取り外し時期、側圧管理方法
10.環境保全計画  洗浄水、養生水、ブリーディング排水、騒音、振動、粉塵、自然環境への影響確認
11,安全衛生計画  工事担当者の安全面・衛生面の確認
12.その他  トラブル時の対処方法の確認

施工方法の設定
 1)現場内運搬、打ち込み、締め固め、仕上げ、養生等の施工方法は、構造物中のコンクリートの品質への影響について十分考慮し、適切な方法を選択する。
 2)設計時に想定した標準的な施工方法よりも適すると考えられる新施工方法を採用する場合は、実験などによりコンクリートの品質に与える影響を確認する。

施工性能の設定
 1)設定した施工方法に即して、適切なコンクリートの施工性能を設定しなければならない。
 2)要求されるコンクリートの施工性能を設定することが出来ない場合は、施工方法の設定等にさかのぼり再度検討する。

コンクリートの施工性能=充てん性、ポンプ圧送性、凝結特性などのワーカビリティー、強度発現特性など。
フレッシュコンクリートの経時変化を十分考慮し、作業の各段階で必要とされる施工性能を設定する。
施工性能が確保できない例=ポンプによる長距離圧送で所要の充てん性やポンプ圧送性が得られない場合には、場内運搬方法を変更するなど施工方法を再検討する。

性能照査
 性能照査の対象となるコンクリートの特性値
・設計において設定された強度
・中性加速度係数
・塩化物イオンに対する拡散係数
・耐凍害性
・耐化学的侵食性
・耐アルカリシリカ反応性
・透水係数
・耐火性
・乾燥収縮ひずみ
など。
参考値として示される材料条件、配合条件、施工計画で設定する充てん性、ポンプ圧送性、凝結特性、強度発現性も照査の対象

施工計画の確認と変更
 1)コンクリートの施工計画が工事の要件を満たすと共に、構造物の要求性能が満足されることを適切な方法で確認しなければならない。
 2)施工計画の変更は、変更による影響最小とする。一般には、コンクリートの配合、施工方法の範囲で変更するものとする。
 3)施工計画が設計で示された参考値と異なる場合、施工計画を反映させた条件で、再度、施工段階におけるひび割れ照査を実施しなければならない。

標準的な施工方法

作業区分

項目

標準

運搬 現場までの運搬方法 トラックアジテータ車
  現場内での運搬方法 コンクリートポンプ
打込み 自由落下高 1.5m以内
  一層当たり打込み高 40〜50cm
  許容打重ね時間間隔(外気温25℃以下) 2.5時間
  許容打重ね時間間隔(外気温25℃超) 2.0時間
締固め 締固め方法 内部振動機
  内部振動機の挿入間隔 50cm程度
  内部振動機の挿入深さ 下層コンクリートに10cm程度
  一箇所当たりの振動時間 5〜15秒


以下は2002版のメモ-------------------------------------------------

 工事開始前に、工事要件(環境に対する負荷、施工の安全性、工費、工期等)を満足するように、構造物の設計に基づき、施工条件および環境保全を考慮して、施工計画を策定しなければならない。

 考慮すべき環境保全項目は、
a. 周辺地域の環境保全 : 騒音、振動、大気汚染、水質汚濁、粉塵。
b. 生活環境の保全 : 建設副産物の適正処理、再生資源の有効活用。
c. 自然環境の保全 : 人体や生物への影響の少ない施工。
d. 地球環境の保全 : 使用エネルギー、排出CO2の少ない施工。


 コンクリート関連で記載すべきもの
・ レディーミクストコンクリートの種類と特別に要求される数値目標。
・ コンクリートの全数量、入手方法、一度に入手できる量。
・ コンクリートの製造方法。
・ 運搬路、水、排水等の仮設。
・ 作業中の管理と検査計画方法
・ 使用機械。
・ 人員と資格。

 コンクリート工事に関する施工計画
 1. 工程計画 : 工事施工中に問題が生じても工程が中断されないように、生じる危険性を予想し予め検討しておく。
 2. コンクリートの運搬・受け入れ計画 : 打ち込みを円滑に行うために、生産と十分に打ち合わせをして計画する(構造物の種類と形状、コンクリートの種類、数量、納入日時、荷下ろし場所、時間あたり出荷量)。
 3. 現場内運搬計画 : 打ち込み終了までの運搬時間や運搬距離。
 4. 打ち込み計画 : ・コンクリートポンプの機種、台数、設置場所、配管計画、圧走条件の検討。 ・打ち込み作業が中断しないように打ち込み区画、打ち込み方法、打ち込み速度、順序を決める。 ・打ち込み区画は、構造物の種類と形状、コンクリートの供給能力、工程、打ち込み能力、打継目について検討し、無理のない1日の打ち込み量から定める。
 5. 締固め計画 : 構造物の種類と形状、コンクリートの供給状態、打ち込み体制、打ち込み能力、締固め能力、打ち込み速度で決める。
 6. 仕上げ計画 : 凝結時間を考慮して、所定の形状寸法と表面状態を得る。
 7. 養生計画 : 養生計画は、打ち込み後の一定期間をコンクリートの硬化に必要な温度および湿度を保ち、有害な作用の影響を受けないようにする。
 8. 打継ぎ計画 : 設計で定められていない打継目の施工に際しては、適切な位置、構造、施工方法とする。

上記以外に次のような計画を立てる必要がある。
 9. 鉄筋の計画
10. 型枠および支保工の計画
11. 環境保全計画


標準施工法
 コンクリートの運搬、打ち込み、締固め、養生は品質に対して最も影響の大きいところである。
構造物の性能照査で想定する標準の施工方法は、
・運搬 : コンクリートポンプ。吐出口から打ち込み面まで1.5mの落下高。打設厚は40から50cm。
・打ち重ね時間 : 25℃以下で2.5時間、25℃以上で2時間。 
・締固め : 内部振動機。挿入間隔は50cm、挿入深さは下層コンクリートに10cm。振動時間は5〜15秒/箇所あたり。
・養生 : 湿潤養生(湿布、散水、型枠残置)。養生期間は日平均気温15℃以上で普通ポルトランドセメントの場合5日間。高炉セメントの場合7日間。早強セメントの場合3日間。