★製造上の留意点
◇材料を加熱する場合、熱量の大きい事と容易さから水の加熱が有利である。水と骨材の混合物の温度は40℃以下とする。ただし、一様に加熱する事が困難なセメントは、加熱してはならない。
★施工上の留意点
◇打ち込み時のコンクリート温度は、5℃〜20℃とする。
◇運搬・打ち込み作業時、コンクリートの温度降下は時間当たり外気温との差の15%程である。
◇コン示に示す、コンクリートが凍害を受けない強度まで養生する。5N/mm以上。
コンクリート温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上板持つ。
◇給熱養生を行う場合、特別の管理が必要である。
給熱が過ぎれば水分蒸発による乾燥が生じ、表面にひび割れが生じる。
コンクリート硬化後、急にコンクリートを冷たい外気に曝すと、表面温度とコンクリート内部温度の差によりコンクリートに温度応力が生じ貫通ひび割れがあ発生する。
◇保温性の高い木製型枠を採用するとか、保温材を型枠背面に張り付ける等の処置をする。打設部分全体にシート掛けを行い、直接外気に曝さないようにする。
同じ木製枠でも板厚を大きくして保温性を高める手法がある。
◇コンクリート温度が外気温と同じになるまで時間を置き、脱枠を急がない等を行う。
◇スラブ打設においては、打設階を暖めるだけでなく、下の階も暖房して全体を暖める事は有効である。
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暑中コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇暑中時はコンクリートの水和反応が促進され凝結が早くなる。
外気温上昇による急激なスランプ低下で、コールドジョイントを生じさせる事等が無いようにする必要がある。
また、コンクリート表面からの急激に水分が蒸発し、水和反応に必要な分が不足する事態も出てくる。
暑中期のコンクリート養生は、適切な措置を取らないと初期強度は出ても長期強度が伸びない。
コンクリート中の水、水和ゲルに付着する水が乾燥で失われ、大きく乾燥収縮する恐れが高まる。
これらを勘案し、日平均気温25℃を超えると予想される場合、暑中コンクリートとして施工する。
◇コールドジョイントを作らない。
◇長期強度を確保する。
◇耐久性確保の観点から、乾燥収縮によるひび割れを多くしない。
★製造上の留意点
◇温度が高いと水和反応は速くなる。運搬中のスランプロスが大きくなる。
凝結開始時間を延ばすために遅延剤を使用する。
◇コンクリートの温度を1℃下げるためには、骨材温度を2℃、水温を4℃、セメント温度を8℃、何れかを下げればよい。
◇所要のワーカビリティーを得るための単位水量は、外気温が10℃上昇すると2%〜5%増す。増加する単位水量に対し、W/Cを保つために単位セメント量を増すと、水和熱の増加になる。従って、水や骨材の温度を下げるのが有効である。
◇骨材の比熱は0.2、水は1.0。骨材温度がコンクリート温度に与える影響は大きい。
直射日光を防ぐため、屋根付きの骨材貯蔵場所を使用する。
骨材への散水効果は粗骨材の方が優れる。細骨材は表面水の管理が難しくなる。
◇冷水の利用は有効であり、管理しやすい。
水温を下げるため、フレークアイスを練り混ぜ水の一部に使う。
小片の氷を使う場合は、練り上がり時に融解していることを確認する。
氷塊は使わない。氷塊はコンクリート硬化後に空隙となる。
◇液体窒素を練り上がったコンクリートに吹き付けて、気化熱で冷却する場合は、酸素欠乏状態にならないように換気と酸素濃度管理に注意すること。
★施工上の留意点
◇コンクリートの打ち重ねは、25℃以上と以下で異なる。
◇凝結が速くコールドジョイントが発生しやすいので、打設区画を小さくする等の処置をする。
◇迅速な施工が出来るように、適切に労務配置(能力、員数)や機械・設備の計画をすると共に、前もって打設概要やポイントを周知徹底しておく。
◇JASS5では荷卸しのコンクリート温度を35℃以下とし、コン示では打ち込み時のコンクリート温度を35℃以下としている。
◇打設面が乾燥しないように、打設箇所をテント等で覆う。打設表面乾燥によるプラスチック収縮ひび割れを出さないようにする。発見したら直ちにタンピングするか、再振動によりひび割れを除去する。
◇打ち重ね面に遅延剤を散布してコールドジョイントを作らないようにする。
暑中時に風が吹くと表面乾燥は一層大きくなる。全面にテントを掛けるのは、直射日光を遮り、防風するので有効である。
◇打ち込み後、速やかに養生する。24時間は露出面を乾燥させないで湿潤に保ち、5日間以上養生する。
湿度が低い、風が吹いているなどの場合は、表面は急速に乾燥してひび割れが発生しやすい。
湿潤の処置としては、以下がある。
1)散水・保水マットを敷いて湿潤状態にする
2)仮上屋やテントドームを打設箇所に設けて直射日光や風を防ぐ。
3)膜養生剤を散布する。
4)灌水養生
5)霧状に散水を続ける。
6)断面の大きいマスコンクリートではパイプクーリングを併用する。
◇JASS5では、予め工事監理者の承認を受けておれば、スランプダウンしたコンクリートに流動剤を添加してスランプを回復させて打ち込むことが出来る。
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水中コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇トレミー管を使って打ち込まれた水中コンは同配合の標準養生したものに比べて、60%程に低下する場合がある。
場所打ち杭や地下連側壁の施工で、孔壁安定のためベントナイト液を使う場合、その中に打ち込まれた水中コンクリートの圧縮強度は、同配合の標準養生したものに比べて、60%〜80%と低い上にバラツキも多い。
従って水中コンは富配合とする。
★製造上の留意点
◇海水の作用による劣化の1つはエトリンガイト生成による。これの生成が少なくなるようにC3Aや水酸化カルシウムが少ないセメントを使用することは効果がある。ポゾラン効果により水酸化カルシウムを消費する混合セメントも効果がある。
◇流動性に富むコンクリートとする。打ち込まれたコンクリートが山状になり、スライム等を巻き込んで品質不良を生じないようにする。
スランプが小さくては流動性が劣り、大きすぎては材料が分離しやすくなるので、コン示ではスランプを18cm〜21cmを標準としている。JASS5は21cm以下と定めている。
◇単位セメント量370kg以上。コン示では一般の水中コンクリートでW/Cは50%以下。
JASS5では場所打ち杭は60%以下、地下連続壁で55%以下と規定している。
◇骨材の最大寸法はコン示では鉄筋あきの1/2以下かつ25mm以下を標準としている。JASS5では25mm以下。
セメント分の流出を抑制するため、細骨材率(S/A)は40〜45%を標準とする。砕石を利用する場合はそれより3〜5%増やす。
◇水中不分離性コンクリートは混和剤による増粘効果により、一般のコンクリートより単位水量が大きくなる。過度の増加を避けるため、減水剤AE減水剤、高性能減水剤を適量混合する。
◇水中不分離性コンクリートは練り混ぜ負荷が大きくなるので1バッチの容量を公称容量の80%以下とする。練り混ぜ時間も通常より長い90〜180秒とする。
◇水中不分離性コンクリートは耐凍害性が低い。凍結融解作用を受ける箇所では採用しない。
◇空気量は4%以下を標準とする。水圧により空気量が減少することは殆ど無い。
◇水中不分離性コンクリートの配合強度は水中作成供試体の圧縮強度とする。
★施工上の留意点
◇水中コンクリートは5m/秒以下の静水中に打ち込む。型枠組み立てにあたっては水の移動がこれ以下となるようにする。
◇トレミー管の内径は粗骨材最大寸法の8倍以上とする。また、作業上支障がない範囲で出来るだけ大きいものを用いる。一般的には水深3mで25cm、5mで50cmである。
◇コンクリートポンプにより打ち込む場合は、粗骨材最大寸法の3〜4倍、10cm〜15cmの内径が一般的である。配管1本あたりの打設面積は5m2程度とする。
◇レイタンス処理が非常に困難なことから、水中での打ち継ぎは行わない。所定の高さまで打ち込みを中止しない。
◇水中不分離性コンクリートは凝結が遅延傾向になるため、側圧は液圧として型枠を計画する。
◇水中不分離性コンクリートは材料分離しにくいが、水中落下高さは50cm以下とする。水中移動距離は5m以下とする。
◇水中不分離性コンクリートは降伏値が小さく粘性が大きいため、高い流動性とセルフレベリング性を有する。しかし、それ故に、ポンプ圧送負荷は普通のコンクリートの2〜3倍、打ち込み速度は1/2〜1/3程度になる。
◇表面に近い部分のコンクリートは、硬化しても脆弱であることから適切に除去する。場所打ち杭の場合のように、安定液中に打ち込まれた水中コンクリートは、高上がりに打ち止め、硬化後に頭部をハツリ取る。
◇場所打ち杭、地下連続壁にあっては、鉄筋建て込み後、速やかに打設を開始する。鉄筋に安定液のベントナイトが付着し、鉄筋とコンクリートの付着を阻害することの無いようにする。粘土が鉄筋に付着すると付着力は50%程にもなる。
◇場所打ち杭、地下連続壁の孔壁面は凸凹しており、振動締め固めできないので、10cm以上の鉄筋かぶりを取る。
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プレパックドコンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇型枠の中に予め粗骨材を投入しておき、骨材の間隙にモルタルを注入してコンクリートを造ること。
水中でのコンクリート、逆打ちコンクリート、放射能遮蔽コンクリート等、通常のコンクリートでは施工しにくい場合に用いられる。補修用コンクリートとしての用途もある。
★製造上の留意点
◇粗骨材はモルタルが充填しやすい粒度をもつものとする。一般に最小寸法を15mm以上とする。
モルタルは流動性が高く、材料分離が無く、適度の膨張性を持つものとする。
◇コン示では、注入モルタルはポルトランドセメントを標準とし、フライアッシュ混合を原則としている。
一般的には、普通ポルトランドセメント、フライアッシュ、細骨材、水、減水剤、膨張剤としてアルミニウム粉末を用いる。
混合セメント(フライアッシュセメント、高炉セメント等)は、試験を行い、結果が適当であることを確認すること。
高炉セメントB種は、W/Cを小さくするとブリーディング量が減少する。
◇膨張剤としてアルミニウム粉末を用いる。膨張率は、3時間後で5〜10%、高強度では2〜5%を標準とする。
これは、ブリーディングにより沈下収縮するモルタルを膨張させることで、粗骨材との付着を良くするためである。
硬化前にブリーディング水を追い出し、粗骨材の隙間にモルタルを充填し、粗骨材とモルタルとの付着を良好にするために用いる。
したがって、水酸化カルシウムの結晶やエトリンガイトを生成して膨張する材料はメカニズムが違うので使えない。
アルミニウム粉末はセメントペースト中のアルカリと反応し、水素ガスを発生して膨張する。反応は早期に終わり凝結前に終了する。
2Al+3Ca(OH)2+6H2O→3CaO・Al2O3+6H2O+3H2
◇粗骨材最小寸法は15mm以上。細骨材は2.5mm以下とする。
最大粗骨材寸法は最小寸法の2〜4倍とする。粒度範囲は広くない方が良い。
注入モルタルの浸透性と保水性を確保するため、2.5mmふるいを全て通過すること。一般に粗粒率1.4から2.2の範囲を使う。
粗骨材の最小寸法とモルタルの浸透は密接に関係するので、差し支えのない範囲で大きいものを使用する。
◇練り混ぜミキサーはセメントや混和材を分散混合するものを選択する。
練り混ぜ時間が長くなると、モルタル温度が上昇し膨張率が減少しやすいので5分以内に練り混ぜが完了するミキサーを用いる。
◇コンシステンシーは漏斗流下時間16〜20秒を標準とする。
★施工上の留意点
◇型枠は、モルタル漏れのない構造とする。
◇粗骨材はモルタルの注入を容易にするため、特定の粒度持つものとする。
粗骨材の間隙が小さくなってモルタル注入に支障が出ないように、骨材は丁寧に投入しなければならない。乱雑な投げ入れによる粗骨材の割れは厳禁。
◇モルタル注入管は前もって型枠に設置するが、粗骨材の最小寸法に応じて、適切に定める。
また、モルタルの流動性、流動勾配、1本当たりの注入面積、注入高さ、注入速度によって適切に定める。
コン示では間隔は2m以下を標準とする。
◇モルタルの注入は、下から上に向かってゆっくりと注入する。
注入管の先端は0.5m〜2.0mモルタル中に差し込む。
モルタル流動勾配は1:3以下。
注入速度は、モルタル面上昇速度が0.3m〜2.0m程度とする。
◇水中下のプレパックドコンクリートにあっては、注入モルタルの流動勾配が大きくなると、モルタルと水が混ざり合って分離しやすくなる。また、モルタル端部にレイタンスが溜まり、強度低下や硬化不良などの品質劣化を生じやすい。
これを防止するため、流動勾配は1:3より小さくする必要がある。
◇注入速度を適切に管理する。注入速度が速いと、骨材とモルタルの付着が十分でなかったり、充填不足を生じる。
打継目処理が大変困難なことから、中断しないで注入する。
そのために、必要な資機材を用意するだけでなく、不測の事態を想定した手配をする。
◇注入管理にあたっては、モルタル面を的確に知ることが重要である。
予め、スリット付きや孔付きの観測管(φ35〜65mm)を適切な間隔で建て込んでおく。
重りを付けた浮子を観測管内に挿入して、糸の長さでモルタル面を直接測定するか、管上端に取り付けた超音波素子により自動計測する。電気抵抗によりモルタル面を推定する方法もある。
◇ブリーディングにより表面部分の品質が低下しやすいので注入にあたっては留意すること。
余分に注入して、品質劣化したモルタル分をオーバーフローさせる等の手段を検討すること。
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海洋コンクリートとは
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇海水中には各種塩分がイオンとして溶けており、これによるコンクリートの劣化を抑制することが必要である。
塩化ナトリウム(NaCl)がコンクリート中に浸透すると、鉄筋の不動態皮膜を破壊し、電池を形成して鉄筋腐食が始まる。
発錆限界は1.2kg/m3程度とされており、コンクリート標準示方書では塩化物イオン量を0.3kg/m3以下としている。JASS5では監理者の承認があれば0.6kg/m3以下としている。
◇鉄筋の腐食は酸化作用であることから、酸素と水分、酸化を促進させる塩化イオンの存在が腐食に大きな影響を与える。塩化物の飛沫帯、干潮帯、海水中の順で腐食し易い。
◇また、Naはアルカリであり、カリウムと共にアルカリシリカ反応(ASR)を促進させる物質であることに留意する必要もある。
◇海水中の硫酸マグネシウムが水和物である水酸化カルシュウム(Ca(OH)2)と反応して石膏と水酸マグネシウムを生成。石膏の一部はアルミン酸三カルシウム(C3A)と反応してエトリンガイトを生じ、著しい体積膨張を起こしてひび割れを発生させる。
◇海水中の塩化マグネシウム(MgCl2)が水酸化カルシュウム(Ca(OH)2)と反応して塩化カルシウムが生じ、これが水溶性であることからコンクリートを多孔質化させる。
流砂がコンクリート表面を削り取る”すり減り劣化”に対しても、緻密で強度のあるコンクリートを作り出す必要がある。
◇海水に対する抵抗性を高める観点から、アルミネート相(C3A)の少ない中庸熱ポルトランドセメントや水酸化カルシウムの生成量が少ない高炉セメント、フライアッシュセメントなどの混合セメントが適している。
◇海洋環境下にあるプレストレストコンクリートは通常よりPC鋼材の腐食を防がねばならない。グラウト充填を確実に行う等を計画するだけでなく、塩化物が付着しにくいボックス形状にする、外ケーブル式にするなどの検討をする必要がある。
◇プレキャスト部材を使った桟橋形式が採用されている。この場合は、横締めシースをメッキ部材とし、PC鋼線挿入までゴム栓で塞いで塩化物の侵入を予防することが要求される。
◇鉄筋腐食を予防するため、エポキシ樹脂鉄筋を使う場合は、曲げ加工部分の樹脂が剥がれやすいことから、補修タッチ塗装を行う。
ステンレス鉄筋の採用が始まっているが、ステンレスの種類により耐腐食性が違うことから材料の受け入れ時の品質確認を確実に行う必要がある。
◇型枠組立期間中に塩化物が付着した場合は、打設前に”塩洗い”を行い除塩する必要がある。
◇高強度コンクリートは普通コンクリートに比べ緻密でイオン等の侵入が少なく、中性化しにくい特性を有する。しかし、単位セメント量が多く、自己収縮量が増え、水和熱によるひび割れ発生の恐れも高い。
また、フレッシュコンクリートの粘性が大きく、充填不良を生じやすい。
このことより、海洋コンクリートに高強度コンクリートを採用することは慎重でなければならない。
◇C3Aは塩化物と反応して不溶性のクロロアルミネートを生成する。これがコンクリート中の空隙を充填していき、外部からのイオン等の侵入を抑制する。
耐硫酸塩ポルトランドセメントなどC3Aの少ないセメントはこの効果が少ないため、海水中の硫酸イオンによる劣化を防止する目的で使用すると、鉄筋腐食を防止する能力が低下することに注意しなければならない。
◇外気温が特に低い場所では、海水が濃縮されて化学作用を受ける上に凍結融解作用が重なるので、真水に比べて耐凍害性が低下しやすい。1/10程にも下がる。
◇波浪により海水中の砂粒が衝突し、すり減り作用を与える。かぶりを厚くするか保護材で養生する。
★製造上の留意点
◇JASS5では、海水の作用を受けるコンクリートはW/Cを50%以下としている。このことにより塩化物等の侵入の少ない緻密なコンクリートとする。
耐久性からW/Cを50%以下としており、通常のコンクリートに比べ単位セメント量が多くなりやすいことから、AE減水剤を適切に使う事で増加を抑制しつつ作業性を確保する。
◇コン示では寒冷地のコンクリートで海水や凍結防止剤などの塩化物の影響を受けると共に、表面にスケーリングが生じそうな場合は、W/Cを45%とし、空気量を6%以上とすることで抑制するとしている。
◇エポキシ樹脂塗装鉄筋を使う場合でも、耐久性の観点から定まるW/Cは規定値以下とする。(土木学会の指針で規定)
★施工上の留意点
◇塩化物等の侵入を抑制するため、感潮帯(満潮位の上60cmから干潮位下60cmの間)にコンクリートの継ぎ目を設けないようにする。
また、満潮位上60cm以上の部分であっても、打ち継ぎ目を設ける場合は、塩化物等が侵入しにくいように勾配を付けることを行わなければならない。
◇鉄筋腐食を防ぐためには、かぶり厚さを確実に確保しなければならない。スペーサーは2個/m3以上を使う。また、スペーサーは腐食の無い、太陽光による劣化のないモルタル製あるいはコンクリート製とし、その品質はコンクリートと同等以上とする。
◇ブリーディング水が鉄筋下に溜まり、空洞を生じて塩化物イオンを溜めることが無いように再振動を行うなどして密実なコンクリートを造る。
◇ひび割れは、塩化物イオンの侵入口となることから、ひび割れを生じさせないように十分な養生を行う。
◇耐久性からW/Cを50%以下としており、通常のコンクリートに比べ単位セメント量が多くなることから、大断面の海洋コンクリートで温度応力によるひび割れを生じさせないように養生管理を計画する。
乾燥収縮の大きい骨材を避ける工夫も有効である。
◇コールドジョイントは塩化物イオンの侵入口となることから、適切な区画割や運搬計画、要員配置計画を立てる。
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舗装コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
舗装コンクリートの厚さは、輪荷重と温度による応力で、設計耐用期間中に広う限界状態に至らないように設計する。簡易的には、交通量に応じて15cm〜30cmの範囲にある値を使用する。
◇コン示では、σ28における曲げ強度を設計基準としている。
日本道路協会では、設計基準曲げ強度の標準を4.5N/mm2としている。
港湾空港建設技術サービスセンターでは、空港舗装コンの設計基準曲げ強度の標準を5.0N/mm2としている。
★製造上の留意点
◇曲げ強度、耐久性、収縮抵抗性、すり減り抵抗性などの所要の品質を満たし、かつ、作業性やフィニッシャビリティーを確保出来る範囲で、単位水量を出来るだけ小さくする。骨材の最大寸法を適切に決める。
◇単位水量の上限値は150kg/m3とする。
◇上記の目的のため、また、体積変化の最小化、運搬中の材料分離の最小化を図るため、コン示はAE剤を使用することを原則としている。
◇曲げ強度はW/Cだけでなく、粗骨材とモルタルの付着や骨材の種類による影響を受ける。従って、使用する材料を用いた試験結果に基づいてW/Cを定めることをコン示は規定している。
◇凍結融解が繰り返される場所でのW/Cは45%、時々起きる場合は50%と、コン示は規定している。
◇コンシステンシーはスランプ2.5cm、振動式コンシステンシー試験による沈下度で30秒を標準とする。
手仕上げ、あるいは簡易な機械施工では、スランプ6.5cmとしている。
◇すり減り抵抗性は粗骨材の影響が大きいため、コン示では、ロサンゼルス試験によるすり減り減量の限界を35%以下と定めている。
★施工上の留意点
◇施工のフローは、コンクリートの練り混ぜ→運搬→荷卸し→敷均し(下層)→鉄網設置→敷均し(上層)→締め固め→荒仕上げ→平坦仕上げ→打ち込み目地→粗面仕上げ→初期養生(膜養生等)→後期養生→目地切り→注入目地である。
粗面仕上げ後に乾燥による水分不足でコンクリートの硬化が阻害されることがある。表面を荒らさないで養生出来る程度にコンクリートが硬化するまでの養生を初期養生と呼び、一般的に膜養生や屋根覆いをする。
◇生コン工場から購入する場合、スランプ5cm以下の舗装コンクリートは材料分離しにくいため排出しやすいダンプトラックで運ぶ。運搬時間は1時間以内とし、乾燥しにくいようにシート等で覆う。スランプ5cm以上の舗装コンクリートは材料分離を少なくするためアジテーター車で運ぶ。
◇現場養生供試体の曲げ強度が所定の配合強度の70%に達するまで養生を行う。この際、配合強度は設計基準強度より大きいので注意をすること。
養生期間を定めるための試験を行わない場合、早強ポルトランドセメントで7日間、普通ポルトランドセメントで14日間、中庸熱ポルトランドセメントで21日間の養生とする。
◇鉄網は3kg/m2を標準とし、一般に6mm径を用いる。
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転圧コンクリート(RCCP=転圧コンクリート舗装)
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇RCCPに使うコンクリートは圧縮強度に対する曲げ強度が普通のコンクリートより大きい。粗骨材量が多いため、すり減り抵抗性、耐摩耗性に優れる。
◇単位水量が100kg/m3程と少ないため、乾燥収縮が小さく、横目地間隔を長くできる。
硬練りでスランプ試験が適さないため、コンシステンシー試験としてVC試験、マーシャル突き固め試験、ランマ締め固め試験のいずれかを使う。
W/C35%程度となる。
◇平坦性を重視する硬練りコンクリートであるため、最大寸法20mmの粗骨材を使う例が多い。
強度に対する影響は配合だけでなく、転圧施工の良否が大きい。
★製造上の留意点
◇転圧コンクリートは従来の舗装コンクリートに比べ超硬練りで単位水量が少ない。
製造面の特徴は、
1)粗骨材が多い。これにより耐摩耗性、すり減り抵抗性に優れる。
2)単位水量が100kg/m3前後と非常に少ない。これにより乾燥収縮が小さくなり、横目地間隔を長くできる。
3)一般的にW/Cは35%程。
4)圧縮強度に対する曲げ強度が一般のコンクリートより大きい。
5)コンシステンシー試験は、VC試験、マーシャル突き固め試験、ランマー試験の何れかを用いる。
6)平坦仕上げが重視されるため、最大骨材寸法は20mmが一般的。
◇均質なコンクリートを安定的に作ることが出来る範囲で、単位水量を出来るだけ小さくした硬練りとする。
最大骨材寸法は材料分離が著しく起こらないようにする。一般的に20mmあるいは25mmとする。
★施工上の留意点
◇転圧コンクリート(RCCP)の施工面の特徴は、
1)打ち込み目地を設けるのが困難であるので、カッター目地となる。
2)フィニッシャーで均し、ローラーで仕上げる。つまり、汎用機械を使用出来るので、コストダウンし易い。また、小規模施工が可能。
3)強度に対する転圧施工の影響が大きい。
◇コンシステンシー試験は、VC試験、マーシャル突き固め試験、ランマー試験のいずれかとする。
マーシャル突き固め試験による目標値は締め固め率96%。
◇カッター目地の寸法は一般的に目地幅6〜8mm、深さは床版の1/4。
◇圧縮強度はW/Cに比例する。また、圧縮強度はセメント空隙比に支配される。従って、転圧の良否が強度に影響する。
◇RCD工法(転圧コンクリートダム)は、超硬練り貧配合コンクリートをダム軸直角方向にブルドーザーにて薄層に敷均し、振動ローラーで締め固める。
敷均し厚さは25cm、幅は約3.5m。3層0.75mを1リフトとするのが一般的。
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流動コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇流動化コンクリートは、多密度配筋構造物に対して有利である。
1−2.要求される基準・規格
◇流動化コンクリートの圧縮強度はベースコンクリートと同等である。
しかし、ベースコンクリートよりはるかにポンプ圧送性や充填性が良い。
◇作業時のスランプが同等のコンクリートに比べ、単位水量や単位セメント量が少ないため、温度ひび割れや収縮を防止しやすい。
◇流動化の方法は以下の3つ、
1)工事現場で流動化剤を後添加し、直ちに高速攪拌。一般的に使う方法。
2)工場内でアジテーター車に流動化剤を添加し、高速攪拌。
3)工場内でアジテーター車に流動化剤を添加して運搬、現場到着後に高速攪拌。
★製造上の留意点
◇材料分離を抑制するため、ベースコンクリートからのスランプ増大量を10cm以下とする。一般的には5cm〜8cm。
流動化剤を各材料と同時添加するより、後添加の方が流動化の効果が高い。これはセメント粒子に水と界面活性剤が同時吸着するより、表面が水で濡れた後の方が付着しやすいためと考えられる。
◇ベースコンクリートは、通常のより細骨材率より大きくする。流動化後のスランプと同等の普通コンクリートと同じにする。
注意すべきは、0.15mmの微粉末が不足すると流動化後に材料分離しやすく、また、ブリーディングが非常に大きくなること。
◇スランプロス低減型の流動化剤使用にあたっては、予め試すことで作業性などを確認しておく。
◇管理試験は、ベースコンクリートと流動化コンクリートの両方で行う。また、スランプの変化が大きいので試験回数を通常より増やす。
★施工上の留意点
◇一般に現場での後添加となる。流動剤の正確な添加や添加後の高速攪拌の確認など、管理的確に行う体制を構築・運用する必要がある。
◇単位水量が少ない上、分散作用は経時的に低下する。
スランプの経時変化が普通のコンクリートより大きいため、流動化後30分以内に打ち込みを完了させる。
◇ベースコンクリートのスランプが小さいほど、流動化剤の添加量が多いほど、コンクリート温度が高いほどスランプの低下は大きい。
◇再流動化は材料分離を生じやすく、凝結遅延を起こし、耐久性に悪影響を及ぼしやすい。コン示では原則禁止としている。ただし、予め試験により品質に影響を及ぼさないことを確認している場合は、1回だけ流動剤を再添加し、攪拌して所要スランプに戻しても良いとしている。
◇ブリーディング量はベースコンクリートと同等かやや少ない。仕上げのタイミングに留意すること。
◇経時的変化が大きくて作業性を確保しにくい場合は、高性能AE減水剤に変えることを検討する。
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高流動コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇高流動コンクリートは塑性粘度を増大させ、材料分離抵抗を大きくする。
★製造上の留意点
◇高い流動性と材料分離抵抗性を確保するため、高性能AE減水剤を使用する。
さらに塑性粘度を増加させて材料分離抵抗を大きくする。塑性粘度を増加させる方法は3つに大別される。
1)ペースト中の粉体量を増やす。高性能AE減水剤と合わせて使う事で降伏値を下げ、ブリーディングも抑制する。
2)増粘剤を添加する。高性能AE減水剤と増粘剤には相性があるので、予め確認しておく必要がある。
増粘剤は、セルロース系、アクリル系、バイオポリマー系などがある。
3)両方を併用する。上記の確認を行う事。
◇粉体系の高流動コンクリートは、粉体量を増加させることで材料分離抵抗性を付与しつつ高い流動性を確保するものである。バランスの取れた配合が重要であり、
一般に、単位粉体量は0.16〜0.19m3/m3、水粉体比28%〜37%となる。
単位水量は、一般に155kg/m3〜175kg/m3。
◇流動性、材料分離抵抗性はスランプフロー、漏斗流下時間および50cmフロー到達時間などで評価する。JASS5ではスランプフロー値を50cm以上70cm以下と規定している。
◇フレッシュな高流動コンクリートは、骨材の表面水率の変動の影響を大きく受ける。
細骨材の表面水率は5%以下、粗骨材のそれは1%以下になるように管理する。
充填性を満足する表面水の変動幅を事前に確認しておく。さもなくば実績変動幅での充填性の変化をデーター化して使う。
◇粗骨材の単位かさ容積が小さいとコンクリートの収縮率が大きくなると共に、ヤング係数が小さくなる。よって、粗骨材の単位かさ容積は0.500m3/m3を加減とする。
普通コンクリートの単位かさ容積は0.630m3/m3程度。一般的な高流動コンクリートは0.500〜0.550m3/m3。
★施工上の留意点
◇高流動コンクリートは塑性粘度が大きく、ポンプ圧送での圧力損失が通常のコンクリートの2〜4倍になる。配管径のサイズを大きくするなどして圧送をスムーズにしなければならない。低速、低圧での圧送として、作業時間計画を立てること。
◇高流動コンクリートは流動性を高めているが、不用意な材料分離を防ぐため、コン示では打ち込み時のコンクリート最大自由落下高さを5m以下にし、最大水平流動距離は15m以下としている。JASS5では20m以下としている。
◇高流動コンクリートは、高性能AE減水剤を多量に使いスランプフロー保持性能に優れる製造が可能であるが、これにより凝結時間が長くなる。コンクリート温度が低い場合やフライアッシュを混在させた場合に顕著となる。従って、型枠計画にあたっては液圧で設計するなどの検討が必要であり、強度発現が遅くなるので養生計画や脱枠時期の検討には留意すべきである。
◇流動方向や流動距離を思い通りに制御出来なくなる事を考えて、区画割りや打設順序の計画を立てる必要がある。
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高強度コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇W/Cが小さくなるので透気係数は小さくなるり、中性化しにくくなる。
W/Cが40%以下になると中性化速度は極めて遅くなり、30%以下では殆ど中性化は進行しなくなる。
◇W/Cが小さいため、乾燥収縮は小さいが自己収縮は大きくなる。
◇スケーリングは非常に小さく、動弾性係数の低下は小さい。耐凍害性は向上するが、急激な破壊を防止するため、凍害を受ける恐れのあるときは普通コンクリートと同様の空気量(標準で4.5%)とする。
★製造上の留意点
◇セメントペーストの流動性が大きく、材料分離しやすいので、ベースコンクリートは通常の場合より細骨材率(S/A)を大きくする必要がある。
◇W/Cが小さい(相対的に単位セメント量が大きい)ため、温度応力発生を抑制するために水和熱を下げる必要がある。
48N/mm2を超える配合では、低熱ポルトランドセメントを使用し、設計基準強度発現材齢を長期とする。
ポゾラン効果を利用して長期強度の増進を図る方法がある。フライアッシュ、高炉微粉末、シリカヒュームが使われる。これにより良好な流動性、高耐久性、高強度を得る。
60N/mm2を超える配合では、シリカヒュームを使用すると効果が高い。
シリカヒュームや高炉微粉末とシリカヒュームをプレミックスしたセメントが市販されている。
これは、シリカヒュームがセメント粒子間に充填されるマイクロフィラー効果で、高い強度を出すことが出来ることによる。
100N/mm2を超える配合ではシリカヒュームが不可欠となる。W/C20%以下としたコンクリートは120N/mm2を超える。
◇単位セメント量が多く粘性が高くなるため、モルタル先送り等の方法で、練り混ぜるミキサーへの負荷を下げる必要がある。
事前に試験を行い、練り混ぜ時間と負荷電流の関係を把握しておき、負荷電流が最小値を示したら排出する。
◇高強度コンクリートでは、流動性の高いコンクリートを用いることが多い(特に48N/mm2以上では)。この場合のコンシステンシー管理はスランプフロー試験とする。
★施工上の留意点
◇単位セメント量が多いため、温度ひび割れが生じやすい。事前に温度解析しておく必要がある。また、結果を使って対策を取らなければならない。
◇粘性が高いため、締め固め振動機の有効範囲が小さくなる。
打ち重ねにおいて、ブリーディングが少ないために乾燥しやすくコールドジョイントが発生しやすい。振動機によって十分に上下層を一体化する。
区割りや打設順序の計画を入念に行う。
◇W/C35%以下の高強度コンクリートでは、ブリーディングがほとんど生じない。このため仕上げが難しい。
また、プラスチックひび割れが発生しやすいので、仕上げ終了後、直ちに表面養生剤(樹脂エマルジョン)を散布するか、霧状に散水する。
◇コンクリートの粘性が高くなるため、作業性から流動コンクリートとする場合が多い。この場合、側圧は液圧として型枠計画を立てる。支保工なども同様である。
◇高強度コンクリートの圧送損失は大きい。W/C30〜45%程度で通常のコンクリートの2〜4倍となる。スランプフローが小さいほど圧送速度を小さくする。
◇高強度コンクリートの施工に慣れた労務者だけではないので、事前に作業内容、作業のポイントを周知徹底しておかなければ、仕上げ不良などを生じさせてしまう。
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マスコンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇マスコンクリートとして扱うべき部材寸法の目安は、
下端拘束の壁で厚さ50cm以上。
広がりのあるスラブで80cm〜100cm。
トンネルの覆工コンクリートで30cm前後。
◇マスコンクリートは断面積が大であるため、水和反応による総発熱量が大きい上に、放熱が追いつかない。内部温度が大きく上昇し、ピークを過ぎた後も内部温度が降下しにくい。このことにより2つのひび割れが生じやすい。
1)まだ熱いコンクリート内部と放熱しやすい表面部との温度差によって、内部拘束が発生しひび割れが生じる。初期段階に表面部に発生する。
2)コンクリートの硬化が進み、温度上昇が収まって冷えていく際に、コンクリート全体の収縮変形が外部拘束されることによりひび割れが生じる。材齢がある程度進んで生じる貫通ひび割れである。
◇部材寸法、放熱条件、配合等で異なるが、一般に、コンクリートの温度上昇は打ち込み直後から1〜2日後が特に大きく、最高温度を示すのはは2〜5日である。
◇コン示では、マスコンクリートの温度ひび割れ発生の検討を以下のどれかで行うように定めている。
1)実績による評価
2)温度ひび割れ指数による評価
◇断熱上昇量はM=Σ(θz+10)(°D.D)…(コン温+10)(養生日数)
つまり、コンクリート温度が高いほど最高上昇温度と最終安定温度の差が大きい。
◇温度ひび割れを防止するため、温度ひび割れ指数(コンクリートの引張強度を温度応力で除した値)を下記する。
1)ひび割れを防止する場合=1.75以上。
2)ひび割れの発生を出来るだけ制限したい場合=1.45以上。
3)ひび割れの発生を許容するが、ひび割れ幅が過大とならないように制限する場合=1.0以上。
ひび割れ幅が大きくなるようであれば、鉄筋により抑制する。
★製造上の留意点
◇一般的なコンクリートでは、水和熱量は単位セメント量にほぼ比例する。
単位セメント量10kgに対し1℃程の温度上昇となる。
単位セメント量を低減するには以下がある。
1)管理材齢を長く取る。
2)作業性と品質が確保出来る範囲でスランプを小さくする。
3)高性能AE減水剤、流動化剤を使用する。
4)粗骨材寸法を大きくし、単位水量を減らすことでセメント量を減らす。
5)ワーカビリティーが得やすい良質な骨材を使用することで単位水量をへらし、よって単位セメント量を減らす。
◇総水和熱量低減のため、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などを適切に用いることで単位セメント量を減らす。
W/Cの関係から単位水量が減り、ワーカビリティが悪化するのでボールベアリング効果のあるエントレインドエアーの導入は有効である。
◇水和熱量を抑制するために、ビーライト量が相対的に多い低熱ポルトランドセメントや中庸熱ポルトランドセメントを使う。
◇普通ポルトランドセメントに置換材を混合する場合、高炉微粉末は温度依存性が高く、温度上昇が大きくなるなる場合もあることに留意する。フライアッシュの方が低熱である。
水和熱の低いセメントを使ったマスコンクリートの設計基準強度を定める材齢は、σ91が基本である。
◇コンクリートの断熱温度上昇は、セメントの粉末度に影響を受け、大きいと水和反応が早いため急な温度上昇カーブを描く。構造物の断面特性や区画割り計画を参考に適切な粉末度を選択する。
◇コンクリートの打ち込み温度を低くすることは、部材内外の温度差を低減するだけでなく、部材内の最高温度も下げるので、温度ひび割れ発生の抑制に有効である。
各材料が練り上がり温度に与える影響は、
骨材温度が±2℃につきコンクリート温度が±1℃。以下
水±4℃につき±1℃。
セメント±8℃につき±1℃。
◇冬期の外気温が低くても、想定する水和熱総量が大きければ、冬期であってもマスコンクリートとして製造する。
★施工上の留意点
◇温度ひび割れを防止するため、区画面積や打ち上げ高さを小さくすることでボリュームを減らし、総水和熱量を低減させる打設計画を立てる。
コン示ダム編では、リフト高の標準を1.5m以上2.0m以下としている。
◇先に打設したコンクリート温度が高いうちに次層の水和熱が加わることで、ひび割れを発生させないように、コン示は打設間隔の標準値としてリフト高によって中2日、中4日としている。
◇養生にあたっては、コンクリート内部と表面部の温度差が大きくならないように、パイプクーリングによりコンクリート内部の温度上昇を抑える。
パイプ周りのひび割れを抑制するため、パイプクーリングの通水温度とコンクリート温度の差は20℃以下とする。
◇パイプクーリングは2回に分ける。
1次クーリング(ピックカット)は水和熱上昇を抑制する時。
2次クーリングはコンクリート温度を設計温度以下にし、継目グラウチングを施工した後に継目を開かないようにするために行う。
◇コンクリート部材全体の温度降下速度を大きくしないで外気温に近づけるため、コンクリート表面をシートやスチロールなど断熱性の高い材料で覆う等を行う。
◇ひび割れ防止の誘発目地の断面欠損率は20〜30%とし、目地間隔は壁・擁壁では4〜5m。誘発場所以外にひび割れが生じないように計画すること。誘発目地が構造上の欠点とならないようにすること。そのために配筋や型枠、打設方法を工夫すること。
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ダムコンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
ダムコンクリートはマスコンクリートの代表である。
★製造上の留意点
一般のダムコンクリートの配合は、
単位水量120kg/m3以下。
単位セメント量の最小値140kg/m3。
スランプ2〜3cm。
粗骨材の最大寸法150mm以下。
RCCPでのダムコンクリートでは、
単位水量100kg/m3。
単位セメント量120〜130kg/m3。
スランプ0cm。
★施工上の留意点
◇マスコンクリートに準じる。
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プレストレスコンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇部材断面に生じるであろう引張応力度と同程度の圧縮応力度を、予め人工的にコンクリート部材に加えておくことで相殺させ、コンクリートに引張応力度を発生させないようにするのがプレストレストコンクリートのメカニズムである。
プレストレストコンクリートの特徴は、
1)常時、コンクリートに圧縮力が加わっているので、ひび割れが発生しにくい。
2)過大な荷重によるひび割れが生じても、除荷後はほぼ復元する。
3)部材断面を小さくできる。自重が少なくなることからスパン長を大きくできる。
4)PC材による圧着接合により、分割化、プレハブ化が容易である。工場生産と組み合わせて工程短縮を図ることが出来る。
5)ポストテンション方式では、シースの中にセメントペーストグラウトを注入しPC鋼材とシースの間に付着力を発生させ、PC鋼材とコンクリートを一体化させるが、充填不足が発生すると付着力不足を生じる。また、モルタルによる鋼材防錆機能が低下し、腐食を発生させてPC鋼材破断、部材破壊につながる
6)コンクリートの乾燥収縮やクリープで導入引張力が減少する。PC鋼材などの緊張材のリラクセーションにより導入引張力が減少する。よって、初期に余分に引張力を加えるが、適切な緊張力導入計画・管理を行う必要がある。
7)プレテンション方式では、コンクリート硬化後のPC線固定解放時にコンクリートの部材短縮が起こる。これによる導入力減少を的確に計画・管理しなければならない。
◇コンクリート強度が普通コンクリートより大きい、緊張力で応力が常時加わっていることにより、爆裂減少が生じやすいなど普通コンクリートより火災で損傷しやすい。
◇アンボイド工法とは、PC鋼材表面にグリースやアスファルトを塗布してシースと未着状態にする方法である。
腐食し易いPC鋼材を、維持管理で容易に交換出来るようにする工法。
★製造上の留意点
◇グラウト注入に使用するモルタルは膨張性を有するものとし、その膨張力はブリーディング水を外に押し出すものでなければならない。
ブリーディングの発生が最大化する時点まで、膨張率はブリーディング率を上回る必要がある。
◇アラミド繊維などの非金属系連続繊維補強材はPC鋼材と同程度の引張強度であるが、ヤング係数は2/3〜1/5と小さい。
低弾性であることから、コンクリートの収縮変形による緊張力損失は減少し、結果、プレストレス有効率はPC鋼材と同等になる。
★施工上の留意点
◇PC鋼材は曲げモーメント分布と相似した形に配置する。一般的には放物線。
配筋と干渉して配置困難化が生じないように、設計図面の照査は慎重を期す。
◇PC鋼材緊張後、出来るだけ速くグラウトを行わなければならない。
注入は低所から高所に向けて行うのを原則とし、空隙を生じないようにする。
◇応力を受け続けている鋼材は、受けていない鋼材より腐食しやすい。これを応力腐食という。
◇緊張力導入時のコンクリートの材齢が若いと乾燥収縮やクリープが大きくなる。
コンクリート強度が所定値を確保していることを確認して緊張する。
◇PC鋼材を溶接接合してはならない。溶接熱により鋼材の品質に変化を生じるためである。
◇ポストテンション式にあっては、先にプレストレストを導入した部分は、後から導入した部分による弾性変形で、導入緊張力が減少する。
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吹き付けコンクリート(ショットクリート)
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇圧縮空気によって運ばれたコンクリートあるいは材料を、施工箇所に吹き付けることで完成させるコンクリート。施工法により乾式と湿式の2つに大別される。
◇吹き付けコンクリートを構造材料とする場合は、設計強度を確保しなければならない。一般にσ28の圧縮強度を基準に規定する。
★製造上の留意点
◇粗骨材最大寸法は25mm以下とされている。一般には15mm以下が多い。
◇細骨材が細かすぎると管内抵抗が大きくなって閉塞しやすい。
粗いと跳ね返りが多い。
細骨材の粒度は一般的に2.3〜3.1。
★施工上の留意点
◇乾式はノズル部分でドライミックスされた材料と水をを混合するため、配合に制約が少ない。
圧送距離を長くできる。
コンクリートの品質がノズルマンの熟練度に左右されやすい。
コンクリートの跳ね返りや粉塵が多い。
施工能力が小さい。
膨張性を有するコンクリートの吹き付けに向いている。
急結剤の添加・混合は吹き付け直前が望ましい。乾式の方が添加が楽である。
◇湿式は、正確に材料を計測し、混合したものを圧気圧送するので品質が安定している。コンクリートの跳ね返りや粉塵が少ない。
◇施工面にある浮き石は危険であるので、予め除去すること。
◇草木は付着を妨げるので、予め除去すること。
◇トンネル壁の粉塵は付着を妨げるので、予め除去すること。
◇吹き付け厚さがわかりにくいので、適切な管理が必要。検測方法としては、
1)検測ピンを立てておく
2)吹き付け直後にピンを差し込んで測る。
3)削孔して測る。
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水密コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
漏水しにくいコンクリート。水密性能の高いコンクリート。
1−2.要求される基準・規格
コンクリートの水密性は透水係数で示される。これが小さい方が水密性が高い。
W/Cが同じであれば、富配合の方が透水係数が小さい。
AE剤の使用は透水係数の低減に効果がある。
良質なポゾラン材は透水係数の低減に効果がある。
ワーカビリティーの良いコンクリートを十分締め固めると透水係数は小さくなる。
湿潤養生が十分であれば材齢が進むにつれて透水係数が小さくなる。
養生中に乾燥させると透水係数は大きくなる。
粗骨材が大きいと下面にブリーディング水が溜まりやすく、透水係数が大きくなりがちである。また、実績率が高いと透水係数は小さくなる。
★製造上の留意点
◇水セメント比(W/C)の上限をコン示は55%以下、JASS5は50%以下と規定している。
◇活性鉱物微粉末(高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム等)ポゾラン効果を使い、セメントペーストの細隙や骨材粒子の隙間を埋めて水密なコンクリートを製造する事は有効な方法である。
◇ブリーディングが多いと毛細管が残り、漏水の原因となりやすいので、単位水量小さくし、単位セメント量を大きくしない。W/Cを55%以下とし、AE減水剤、AE剤を使う。
スランプを8cm程度にし、細骨材率を大きめにしてプラスチックな硬練りコンクリートとする。
◇粗骨材の下面にはブリーディング水が溜まりやすいので、骨材の最大寸法が大きすぎることのないようにする。
◇膨張性混和剤を使って、収縮を抑制することは水密性を高める。
◇初期材齢に1度でも乾燥させると水密性が下がる。十分な養生を行うための適切な計画を立てる。
一般的には、ブリーディング水が引くまでコンクリート表面が乾燥しないようにシートで覆い、仕上げ完了後は直ちに散水・保水マットを敷いて散水し、湿潤状態を確保する。
このことにより水和反応を十分に進める。
ポゾラン効果を期待した配合を行っている場合は、一層湿潤状態確保に留意する。
初期材齢で高温に曝されると長期強度が伸びないことから分かるように、水和反応を進め、ポゾラン効果を大きくするには養生中に高温にならないようにする。
★施工上の留意点
◇水漏れの多くは、締め固め不足、コールドジョイントなどの施工不良である。従って、ワーカビリティーの良いコンクリートを材料分離を起こさせないように打設し、十分養生して、密実なコンクリートを造る。そのために、関係者に作業上のポイントを説明し、適切な締め固めと養生が出来るように教育する必要がある。
◇打継目は水密性にとって弱点となる。出来るだけ設けないようにする。鉛直打継目は漏水を止めることが非常に困難である。出来るだけ避けるが、やむを得なく設ける場合は止水板を用いる。止水板の設置は丁寧に施工しないと漏水箇所となる。
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遮蔽コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇原子力発電所、放射能物質を含むものの貯蔵所、核燃料再処理施設、医療用照射室などから散逸する放射線を遮蔽する目的で施工する。
γ線、x線に対する遮蔽性能は、遮蔽体の厚さと密度の積に比例する。
重量骨材は高価であるため、普通コンで壁厚を大きくする事を検討し、幅に制限がある場合に重量コンとするほうがコストが下がる。
密度の大きいコンクリートは熱伝導率が大きくなることに留意する。
★製造上の留意点
◇放射線の遮蔽のために、コンクリートに鉄粉やボロンフリッツ(ホウ素含有骨材)を混ぜるのは性能向上に有効である。
重量骨材として、褐鉄鉱石、砂鉄、バライトを使用するのは有効である。
結晶水の多い蛇紋岩も有効である。
◇重量骨材を使用するにあたっては、材料分離抑制のため、硬練りコンクリートとする。JASS5では、W/C60%以下、スランプ15cm以下と規定している。
◇放射線が散逸しないように、密実でひび割れのない、そして収縮の少ないコンクリートが望ましい。
そのため、単位水量、単位セメント量を小さくするAE減水剤、高性能AE減水剤の使用が有効である。
◇水和熱を小さくするため、フライアッシュを使用するのも有効である。
◇重量コンを練り混ぜる場合は、ミキサーに過負荷がかからないようにする。
★施工上の留意点
◇放射線の漏洩を防ぐため、打ち継ぎ面は出来るだけ設けない。やむを得なく設置する場合は、放射線の直進を阻むため段差を付ける。
◇重量コンは側圧や荷重が大きくなることに留意する。
◇ミキサーによる練り混ぜが困難な場合は、プレパックドコンクリートを検討する。
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軽量骨材コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇通常より軽量な骨材を使用したコンクリートで、単位質量を下げる場合に使用する。
◇含水率が著しく大きい軽量骨材は、凍結時に水が体積膨張して骨材外に噴き出すためペーストを劣化させる。
同様に、吸水率の高い高炉スラグ粗骨材も注意が必要。
水で飽和されることが多い場所での軽量骨材コンクリートの耐寒性は普通コンクリートより劣る。
★製造上の留意点
◇耐凍害性改善のため、コン示では粗骨材15〜20mmの軽量骨材コンクリートに対し、1%空気量を増やすことを原則としている。
◇軽量骨材の単位容積質量は設計値を超えてはならない。
★施工上の留意点
◇軽量骨材コンクリートを流動化させる場合、軽量骨材のプレウェッテイングが不十分であると、圧力吸水により配管内で閉塞が生じる。
◇すり減りに弱いため、コンクリート表面に浮き出た軽量骨材は、コンクリート内に押し込めならない。
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樹脂含浸コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇セメント系部材を乾燥させて生じた微細空隙に液状モノマー(樹脂)を浸透させ、重合させたコンクリート。
◇高強度で耐久性に富む。
◇製造設備の関係で二次製品となる。
★製造上の留意点
◇浸透する空隙の連続性が確保できる配合としなければならない。
◇浸透速度コントロールによる充填率確保と、残存空気の熱膨張による破壊回避を行わなければならない。そのため、部材の乾燥と脱気の管理を適切に行う必要がある。
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気泡コンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇大量の気泡を混入あるいは発生させて作るコンクリート。
気泡により密度が普通コンクリートより小さい
気泡により断熱性能に優れる。密度が小さいほど熱伝導率が低い。密度0.5以下では熱伝導率0.1以下。
吸水率が大きい。吸水により断熱性能が低下する。
気泡量が多くなると強度が低下する。
◇人工軽量骨材を使ったコンクリート系とペースト系に大別される。
また、場所打ち系とプレキャスト系に大別される。
さらに、場所打ち系は用途により3つに区分される。
1)充填材=トンネルの裏込め
2)断熱材=壁
3)構造材=壁式中低層住宅の構造材
また、気泡を発生させる時期により
a)アフターフォーム=アルミニウム粉末を添加することで気泡を作る。
b)プレフォーム=表面活性剤を高速攪拌して気泡を作っておき、混入する。
c)ミックスフォーム=起泡剤を添加して、練り混ぜ過程で起泡を発生させる。
◇オートクレーブ養生したALC(Autoclaved
Light-Weight
Concrete)は断熱性を持つ2次製品として外壁や間仕切り壁に使用される。
体積の7割が空隙と多孔質である。吸水しやすいので使用する鉄網は必ず防錆処理する。
石灰質及びケイ酸質原料に、水、アルミニウム粉末を混合、オートクレーブ養生する。
ALCの物性はおおよそ、
絶乾密度=450kg/m3以上550kg/m3以下
圧縮強度3.0N/mm2以上
乾燥収縮=0.05%以下
ヤング係数=1750N/mm2
◇コンクリートのヤング係数(E)は圧縮強度(F)、気乾密度(ρ)と密接に関係している。E=4500*ρ*1.5√F<
/FONT>
★施工上の留意点
◇鉄筋や埋設物と密着させるため十分に締め固めなければならない。
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プレキャストコンクリート
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★用途・目的・要求される基準・規格・留意事項等
◇二次製品の多くは、生産性向上のため、通常と異なる養生を採用する例が多い。
★製造上の留意点
◇JIS A
5364では、W/C若しくは水結合材比について、無筋コンクリート65%以下、鉄筋コンクリート55%以下、プレストレストコンクリート45%以下としている。
◇常圧蒸気養生は養生室に蒸気を通し、加熱と加湿をする養生。
◇オートクレーブ養生は、175〜200℃、8〜10atmという高温高圧により水熱反応でケイ酸カルシウム水和物を生成する。これにより短時間にσ28強度を出す。また、シリカ微粉末をセメントの一部と置換出来る。
★施工上の留意点
◇工場による二次製品と現場施工の違いは、
1)自動化設備や熟練労務により、品質が高く安定している。
2)天候に左右されないので、品質の安定と工程維持が簡単。
3)現場養生が無いので工期短縮に効果的。
4)仮設工事を減らすことが出来るので、全体でコストダウンしやすい。
5)規格化により作業機械を効率的に使え、労務変動が少ない。
6)高品質・高耐久性の製品では、長寿命化を図りやすい。また、かぶりを少なくすることで自重を低減出来る。
7)現物を使った載荷試験が可能で、品質確認が容易。