日本は 高度経済成長期 に多くの社会資本を造ってきました。それが 老朽化してきてます。国の経済と人々の暮らしを支える社会資本を捨て置くわけにはいきません。
800兆超の財政赤字が解消されない日本は少子高齢化社会が進み、社会保障費用の増大と労働人口減少による税収低下が予想され、無駄を省き税金を大切に使うことが至上命令になってます。手入れをしたり他に持って行けば使えそうな構造物があります。まだ使えそうなものは
延命化をはかり無駄なく税金を使うことは大切です。
 今までの社会資本整備はフローの時代でした。これからはストックの時代と言われてます。戦略的メンテナンスシステムにより「予防保全による長寿命化」、「性能向上させたリニューアル」、「再生・再利用コンバージョン」を行うことが求められています。

アセットマネジメント
 
厳しい財政状況が続くなかでも、人々の暮らしを支える道路や橋、ダムや堤防、港湾や空港などの社会資本は安全かつ快適に使用できなければなりません。そのためには、少ない費用で大きな効果(便益)を上げる方法が必要です。個人が資産を管理するように、"社会資本を国民の資産と考えて管理していきましょう"というのがアセットマネジメント(asset-management)です。
生活に必要な道路や橋が古くなってきたら、壊して造り直すのではなく、税金が勿体ないから手入れをして長く使いましょうという考え方です。また、手入れをするにあたっては、傷んだ社会資本から逐次修理するのではなく、手入れの順番を考えて修理費用全体を安くしましょうという考え方でもあります。
 構造物の生涯費用とも言うべきライフサイクルコスト(LCC)を検討して、効率よく延命化させるのがアセットマネジメントの基本です。そして、アセットマネジメントのポイントは社会資本の評価(診断と価値)と手入れの優先順位です。LCCはこの判断材料に使います。

ライフサイクルコスト  
 橋や堤防などの社会資本を、計画−設計−施工(工事)−維持管理−補修・更新−解体・撤去まで、人の一生に見立てた生涯費用がライフサイクルコストです。掛かる費用を最小化することで効率化を図る訳です。
初期建設費(イニシャルコスト)と維持管理費用(ランニングコスト)を比較した場合、維持管理費用のほうが大きく、どうすれば一番安くなるのか十分考えライフサイクルコストを計算しなければなりません。

現状
 今までの維持管理は緊急的な構造物補修を主とする事後補修で、アセットマネジメントを取り入れた
予防保全は始まったばかりです。国土交通省が提言(PDF 道路ルネッサンス) をしましたが、生活に密着した地方自治体はこれからです。
地方自治体で予防保全はおろか維持管理すら後手にまわってきたのは「メンテナンスに助成金が無かった」ことが大きく影響しています。

課題
 アセットマネジメントを考える上でのポイント。
 ・旧来の構造物に機能アップ用の新構造物を足した構造の場合、例えば耐震レベルが違いますから、全体を包括した評価手法の開発が課題となります。
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資源循環型社会を目指してリユース材やリサイクル材を利用した延命策を考える場合、材の需要と供給のタイミングを合わせ、運搬で大量のエネルギーを使わないように詳細なデータベースの構築と適切な運用が求められます。
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地球環境に配慮してCO2やメタンガス等の温室効果ガスの排出を抑える必要もあります。ライフサイクルコストのように構造物の生涯にわたるエネルギー使用量やCO2排出量(=LCCO2)を検討(これをライフサイクルアセスメント:LCAと言います)しなければなりません。
 ・社会資本の更新や維持管理の費用をどのように工面するかです。新しく造る金が無い、修理する金すらままならない程に
公的投資が不足する近未来にたいして解決策はあるのでしょうか。社会資本整備への民間資金導入(PFI等)や便益を包括したバランスシートの導入を考えなければならないでしょう。少なくとも、メンテナンスのピークを山崩しするためだけにアセットマネジメントを考えるべきではないでしょう。