土木学会 倫理教育小委員会の川島一彦委員長の”まえがき”より

 プロフェッション(専門職業)とは、他のグループにはできない高度な技術を持ち、その分野で大きな貢献と責任を持つ職業を指している。プロフェッションでは倫理綱領を定め、これを遵守することが構成員に求められている。倫理綱領を持ち、これに基づいて行動するということは、社会の信頼を受けて、社会に対して貢献する専門技術者であることを内外に明らかにするものである。−−−<略>−−−−公共事業はそのほとんどが税負担で支出されることから、他産業以上に契約から事業執行に至る広範囲な領域で事業の客観性、透明性と国民に対する説明責任を負っている。したがって、土木技術者は、公平、不偏な立場で透明性と説明責任の下で国民の批判に耐えるプロフェッショナルとして貢献していくことが求められている。


4章4 "倫理的な問題にどのように対応すべきか" の目次
  4.4.1 Professionalの確立と技術者倫理
  4.4.2 技術者倫理と自律性
  4.4.3 説明責任の重要性に対する意識改革
  4.4.4 よいものを、じっくり、適正な量で
  4.4.5 社会に説明できない行為はしない
  4.4.6 組織の倫理と個人の倫理−経営者の使命と責務
  4.4.7 官高民低からの脱皮と契約概念の徹底
  4.4.8 倫理的な問題が生じる温床をなくす努力
  4.4.9 社会に発信する土木学会に



 談合問題と技術者倫理(P69)より
  「談合は違法行為であり」倫理というよりはコンプライアンス(法令遵守)の問題であるが、
談合問題を、違法行為を行う少数の人々に限定された問題と位置づけるのではなく、より広く、談合問題に間接的に関係する様々な人々の価値観や行動規範のあり方にもかかわる問題と捉える必要がある。
これらの間接的に関わる人々は、違法性を問われる立場にないが故に、談合問題への対応に対して倫理的な側面が重要な要素となると考えられる。
(1) 談合問題に直接関わる当事者
(2) 組織/企業
(3) 専門家集団/業界団体
(4) 社会/国民
(以上の視点から考察すると)
談合問題に関連する技術者倫理は、談合に関わっている当事者個人の問題というよりも、企業経営上のリスクマネジメントや、専門家集団としての土木技術者全体に課せられた重要な問題と認識することが、基本要件と考えられる。