ASR物語は下欄です。

アルカリシリカ反応
 アルカリシリカ反応による劣化とは、骨材中のある種の成分とコンクリート中のアルカリが反応して生成物が生じ、これが吸水膨張してコンクリートにひび割れが生じる現象である。
 アルカリ骨材反応(AAR)は、コンクリート中のアルカリと反応する鉱物の種類により、アルカリシリカ反応(ASR)とアルカリ炭酸塩反応(ACR)に大別される。世界的に見ると、その殆どはアルカリシリカ反応であり、我が国においてはアルカリシリカ反応について照査することとなっている。
*(注) 片山氏の研究で、アルカリ炭酸塩反応は無く、全てアルカリシリカ反応であることが分かった。
 アルカリシリカ反応を起こす鉱物としては、シリカ鉱物のオパール、カルセドニー、クリストバライト、トリディマイト、微晶質石英などのほかに火山ガラスがある。
*(注)シリカ化合物質である水ガラスは、セメントのアルカリにより大きな膨張(0.5%程)を示す。
 アルカリシリカ反応が有害なレベルに達しないようにするためには、
  ・低アルカリ形ポルトランドセメントの使用と総アルカリ量の規制(Na2O換算で3.0kg/m3以下)
  ・アルカリ量がポゾラン反応や潜在水硬性の刺激剤として消費されることなどによりアルカリシリカ反応が顕在化しない混合セメントを使用する。
  ・「無害」と判定される骨材を用いる


アルカリ骨材反応(濱田秀則)


アルカリシリカ反応抑制対策実施要領
アルカリシリカ反応抑制対策について、一般的な材料の組み合わせのコンクリートを用いる際の実施要領を以下に示す。
特殊な材料を用いたコンクリートや特殊な配合のコンクリートについては別途検討を行う。

1.現場における対処の方法
 1.1 現場でコンクリートを製造して使用する場合
現地における骨材事情、セメントの選択の余地等考慮し、2.1〜2.3のうちどの対策を用いるかを決めてからコンクリートを製造する。

 1.2 レディーミクストコンクリートを購入して使用する場合レディーミクストコンクリート生産者と協議して、2.1〜2.3 のうちどの対策に
よるものを納入するかを決め、それを指定する。なお、2.1、2.2を優先する。

 1.3 コンクリート工場製品を使用する場合、コンクリート工場製品(プレキャスト製品)を購入して使用する場合、製造業者に
2.1〜2.3のうちどの対策によっているかを報告させ、適しているものを使用する。


2.検査・確認の方法
 2.1 コンクリート中のアルカリ総量を抑制する 場合
試験成績表に示されたセメントの全アルカリ量の最大値のうち、直近6ヶ月の最大の値(Na2O 換算値 %)/ 100 × 単位セメント量(配合表に示された値s/m3)+ 0.53×(骨材中のNaCl %)/ 100 ×(当該単位骨材量 s/m3)+ 混和剤中のアルカリ量(s/m3)が3.0s/m3以下であることを計算で確かめるものとする。
防錆剤等使用量の多い混和剤を用いる場合には、上式を用いて計算すればよい。なお、AE剤、AE減水剤等のように、使用量の少ない混和剤を用いる場合には、簡易的にセメントのアルカリ量だけを考えて、セメントのアルカリ量 × 単位セメント量が2.5s/?以下であることを確かめればよいものとする。

 2.2 抑制効果のある混合セメント等を使用する 場合
高炉セメントB種またはC種、若しくはフライアッシュセメントB種またはC種※1 であることを試験成績表で確認する。
また、混和材をポルトランドセメントに混入して対策をする場合には、試験等によって抑制効果を確認する。

 2.3 安全と認められる骨材を使用する 場合
JIS A 1145骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)または、JIS A5308(レディーミクストコンクリート)の付属書7「骨材のアルカリシリカ反応性試験(化学法)」による骨材試験は、工事開始前、工事中1回/6ヶ月かつ産地が変わった場合に信頼できる試験機関※2 で行い、試験に用いる骨材の採取には請負者が立ち会うことを原則とする。
 また、JIS A 1146骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)または、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の付属書8「骨材のアルカリシリカ反応性試験(モルタルバー法)」による骨材試験の結果を用いる場合には、試験成績表により確認するとともに、信頼できる試験機関※2 において、JIS A 1804「コンクリート生産工程管理用試験方法−骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(迅速法)」で骨材が無害であることを確認するものとする。この場合、試験に用いる骨材の採取には、請負者が立ち会うことを原則とする。
なお、二次製品で既に製造されたものについては、請負者が立会い、製品に使用された骨材を採取し、試験を行って確認するものとする。
フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材等の人工骨材および石灰石については、試験成績表による確認を行えばよい。

2.4 監督員の確認
 監督員は、請負者より試験成績書、ミルシート等を提出させ確認するものとする。

※2 公的機関またはこれに準ずる機関(大学、都道府県の試験機関、公益法人である民間試験機関、その他信頼に値する民間試験機関)とする。なお、人工骨材については製造工場の試験成績表でよい。

3.外部からのアルカリの影響について
 2.1および2.2の対策を用いる場合には、コンクリートのアルカリ量をそれ以上に増やさないことが望ましい。そこで、以下のすべてに該当する構造物に限定して、塩害防止も兼ねて塗装等により塩分浸透を防ぐための措置を行うことが望ましい。
1) 既に塩害による被害を受けている地域で、アルカリシリカ反応を生じるおそれのある骨材を用いる場合
2) 2.1、2.2の対策を用いたとしても、外部からのアルカリの影響を受け、被害を生じると考えられる場合
3) 橋桁等、被害を受けると重大な影響を受ける場合


2007年度版コンクリート標準示方書[施工編]では、
コンクリートの耐久性
 1)コンクリートに使用する材料は、コンクリートの所要の耐久性を損なうものであってはならない。
 2)コンクリートの水セメント比は、原則として65%以下とする。
 3)コンクリートは、原則としてAEコンクリートとする。

供用期間中にアルカリシリカ反応が有害なレベルに達しないようにするには、
1.コンクリート中のアルカリ総量の抑制、
2.アルカリシリカ反応抑制効果を持つ混合セメントB種の使用、
3.アルカリシリカ反応試験で区分A「無害」と判定される骨材の使用、
のどれかを採用する。
海洋環境や凍結防止剤の使用地域等、外部からのアルカリ侵入が避けられない場合で、使用材料によるアルカリ低減対策のみでは対策が不十分と判断される場合には、表面被覆工法の適用等も検討する。


コンクリートライブラリー124「アルカリシリカ反応対策小委員会 報告書(土木学会)」によれば、
 セメントに含有される硫酸アルカリ(Na2SO4およびK2SO4 セメントの原料である粘土より供給される)や海砂、海砂利から供給される塩化ナトリウム(NaCl)は、セメントの水和反応の過程または水和生成物との化学反応の過程で、コンクリートの空隙内の水溶液を高いアルカリ性(PH=13-13.5、水溶液は水酸化アルカリ(NaOHおよびKOH)を主成分とする)のものにする。
 ある種のシリカ鉱物や炭酸塩岩を含有する骨材は、コンクリート中の高いアルカリ性を呈する水溶液と反応して、骨材の周囲にアルカリシリカゲルを生成する。
 アルカリシリカゲルは吸水・膨潤する性質があり、コンクリートに異常な膨張やそれにともなうひび割れを発生させる。これがASRである。

 カナダ、中国などで事例があるACR(粘土鉱物を含有するドロマイト質石灰岩によるもの)による被害はわが国ではこれまで報告されていない。

 岩石中の鉱物で水酸化アルカリからなる水溶液と反応し、ASRを発生するもの(反応性鉱物)は、無定形または不安定なシリカ鉱物(クリストバライト、トリジマイト、オパールなど)、結晶性の石英であっても、微細な結晶粒や歪んだ結晶格子をもつものであり、これら以外に、シリケート鉱物(雲母、バーミキュライトなど)、火山ガラス(非結晶)などがある。わが国で確認されている反応性骨材には、火山岩が起源の岩石(安山岩、流紋岩など)や堆積岩が起源の岩石(チャート、砂岩、頁岩など)があるが、これらの岩石中には前述した反応性鉱物が様々な量および形態で含有されており、このためにコンクリート中での骨材の反応性および膨張性が大きく相違することが知られている。


アルカリシリカ反応と鉄筋破断に関して
道路橋のアルカリシリカ反応に対する維持管理要領(案)(国土交通省)
アルカリシリカ反応による鉄筋破断が生じた構造物の安全性評価(中間報告)(土木学会)
港湾構造物におけるアルカリシリカ反応(ASR)による劣化とその対策(那覇港湾・空港整備事務所 保全防災課)


u.yanのメモ 
 細骨材起源のASRは、粗骨材をサンプリングする化学法では発見しにくい。念を入れるならデンマーク法。
 粗骨材だけでなく細骨材も岩種確認。
 採取コアのゲル確認。水に浸けておくと出てくる。
 ひび割れパターンを十分確認し、水分補給が有るか否かの確認を。
 ASRでは凍結防止剤使用は塩化物イオン供給、アルカリ分添加と思え。
 亜硝酸リチウムがASRの発生抑制に有効。また、亜硝酸は塩素イオンを取り込むので塩害対策にも有効。
 圧縮強度と弾性係数の関係が異常であることを確認する。
 粗骨材が石灰岩でも安心しない。天然細砂のASR事例あり。
 火山ガラスは溶け出すので、反応が持続しやすい。
 良質骨材の不足により、現実の配合はブレンドが増えている。ペシマムに留意すること。

ASR物語

アルカリと鉱物と水分
ASRのポイントは、
(1)反応させるアルカリ濃度、反応が続くためのアルカリ量
(2)反応する鉱物
(3)生成ゲルを太らせる水分。

外部からのアルカリ
NaClが外から供給されると、コンクリート空隙水のOHイオン濃度が高まる。
NaClは凍結防止剤や海水飛沫に含まれている。
凍結防止剤によって供給される水溶性アルカリ量は、古い構造物程多く、1kg/m3近くにもなる事例あり。凍結防止剤の溶けた水(塩水)により、雨がかり部分がASRになった事例がある。古い橋梁では十分な防水層を有しないことから、寒冷地では凍害とASRの複合劣化がある。
酢酸アルカリ、蟻酸アルカリ(米国空港で使用)は、RangarajuによってASRが促進されることが示された。
Ca(OH)2存在下で、これらの溶液のPHは急上昇する。
我が国ではこの2つは使用されていない。
酢酸カルシウムマグネシウムの実績はある。

内部からのアルカリ
コンクリート中のアルカリの多くは、セメントからである。
半分は硫酸アルカリであり、ビーライト(C2S)やアルミナ(C3A)にも含まれる。
混和剤や混和材に含まれることもある。
見落としがちなのが骨材。
骨材からアルカリが溶出されることが、多くの研究者から指摘されている。温度が高いと溶出量が増えるという報告もある。
正確な溶出量を知る試験手法が、確立されていると言い切れないのが課題。
しかし、”骨材”がアルカリ供給源となり得ることを認識しておく必要はある。
良質な骨材が不足し、リサイクル材利用も始まった現在、骨材にもっと注目すべきである。

アルカリ量
コンクリート中のアルカリ量測定方法には、
JIS(R-5202)法、配合推定法、ASTM(C114-85)法、温水抽出法、熱水抽出法などがある。
これらは、Naイオン、Kイオンを分析してアルカリ量を推定する。
Na2O+0.658K2Oで求め、Na2O換算値で表す。
1986年より、ASR抑制策で、コンクリート中のアルカリ量を3kg/m3以下にするよう規制されている。
これ以外の分析方法として、EPMAを使い分析する手法が提案されている。

残留膨張量
ASTM(C 12605)法やJIS A 1804法などの迅速法は判定結果が早く出るので対策検討に時間が取れる有利さがあるが、試験に要する期間だけでなく、点検によるASRの進展予測や委託先の混雑具合、結果の必要なタイミングなども勘案して試験方法を決定する。

ペシマム。
ASRによる膨張は、反応性骨材量が多い程大きいわけではない。
反応性骨材の粒径や非反応性骨材との割合によって、最大膨張量が変化する。
さらに、反応性鉱物の種類や量、アルカリ量(反応を起こさせ、持続させる供給の仕組み)によってもペシマムは変化する。

荒っぽいペシマムの説明
あるコンクリート部材を有害骨材60%、無害骨材40%で造ったら、有害骨材のまわりに反応リムもクッキリ見えて、0.5%の膨張量であった。
同量のアルカリ量であるが、有害骨材100%で造ったら反応リムも見えず、膨張量も計測できない程であった。
有害骨材の量が多すぎてアルカリ量が不足し、反応ゲルが骨材から浸みだしてリムを造るまでに至らず、膨張出来なかったわけである(ガス欠状況)。
膨張が計測できなかったからといって無害な骨材ではない。
コンクリート中のアルカリに対して、膨張量を最大にする有害骨材の割合があるということ。これがペシマム。
骨材がアルカリと接する全表面積は粒径と相関するので、ペシマムは粒径にもある。
コンクリートのアルカリ総量規制がASR対策として有効な理由であり、無害とされる骨材の使用より優先されるわけでもある。

反応鉱物
ASRを引き起こす反応性鉱物の代表としては、
オパール、玉随、隠微晶質石英などの非結晶シリカ、
安山岩、流紋岩などの火山岩に含まれるクリストバライト、トリディマイト、火山ガラスなど。
ちなみに、これらのペシマム配合は、
隠微晶質石英が50%以上、
クリストバライト、トリディマイトが10%、
火山ガラスが100%。
我が国の地質構造は大変複雑で、反応性鉱物は全国に産すると言っても良い。
骨材は、天然、砕石にかかわらず、エリアや地層を絞って確認しておくことが望ましい。

試験方法の盲点
クリストバライトなどの潜在的有害な骨材があるが、
JIS化学法はこの部分が無いYesとNoであるので、ペシマムに関しての判定が難しい。
モルタルバー法において反応性骨材100%の配合であれば、膨張率が小さく評価される。
これらの欠点を補うには、デンマーク法やASTM促進法の採用が望ましい。

岩種
岩種は火成岩、変成岩、堆積岩大別され、さらに細かく分類されている。当然のようにASRを基準にした分類はない。
生物由来の泥質からチャートがあるようにSiO2は至る所にある。
その中でも火成岩の中の火山岩には反応を示すものが多い。
これはクリストバライト、トリディマイト、火山ガラスが原因である。SiO2含有量の多い流紋岩、安山岩、ディマイトは要注意である。
安山岩は広く分布し、骨材として利用されている。
この安山岩に似たディマイトがあり、十分な観察を要する。
流紋岩は天然砂の中に含まれることがある。
シリカは地球で一番多い物質であることを忘れてはならない。

岩種2
クリストバライト、トリディマイト、火山ガラスの悪役御三家を含む場合でも、粘土鉱物によって膨張量が減ったり、膨張が遅延する場合がある。緑泥岩質が多い場合、シリカが石英となって無害判定になることがある。
安山岩はASRに対して多様な反応を示すやっかいな骨材と考えた方が良い。
シリカが少ない玄武岩はASRと無縁であるかと言うと、悪役御三家を含むのもある。
深成岩はASRが少ないと言われているが、変質作用を受けた場合、シリカ鉱物を生成しないと言い切れない。
骨材は、ピンポイントに近い形で産出場所を特定しておかなければならない理由である。

シリカ
石英はシリカ鉱物であり、成長した安定形とも言える。
石英は硬いため風化されにくく泥質に微細粒子の形で残りやすい。柔らかい泥岩や頁岩が骨材に含まれていないことを確認しなければならない。また、砂岩の基質にシリカ鉱物が少なく、ASRが生じないことを確認する必要がある。
砂岩や礫岩は、各種の鉱物と大小の粒径を有する、ASR判定にとってはやっかいな骨材という認識が必要である。
生物由来のシリカはオパールや微細石英に変化し、ASRを示す。これらを含むチャートは大きな反応性を持つ(ただし、石英の結晶度が高まった場合ASR反応が減少するという研究がある)。
砂利に混じる砂岩、泥岩、チャートによって、遅延膨張の事例がある。
これらのことから、デンマーク法やASTM促進法によるASR判定が望ましい。

骨材生産
1つの岩種からなる地質は無限に広がっていない。水平方向、垂直方向に対して有限である。
変成作用を受けたり、地殻変位を受けたりして岩は不均質である。
骨材採取場は、出来るだけ均質で生産効率の良い場所に設けられるが、その部分が全て均質であることは難しい。
採取現場(切羽)の色相が多少変化したのを目ざとく見つけることも難しい。さらに言えば、色調酷似の岩もある。
しかし、ベテラン調査員であれば、観察で岩質の不均一さを見いだすことが可能である。詳細な地層スケッチ作成も可能である。
オパールは難しいが、クリストバライトや火山ガラスなどは偏光顕微鏡で鑑定を行う事でASR反応性を予測できる。
オパールを含みそうな岩種など、疑念が取れないものは、X線解析法により判断可能である。
生産しようとする岩種のペシマム(量比、粒径)を調べることは可能であり、配合に反映することもできる。
これらの調査・試験で、シリカ鉱物の種類、場所、含有量を確認し、骨材生産に反映させること、コンクリート製造に反映させることは不可能ではない。このためには、骨材生産者、生コン工場が連携した仕組みが必要である。どちらかに押しつける形では成立しないであろう。
ICタグ等を使ってのトレサビリティーも開発できない状況ではない。ただし、コンクリートに向かないとされる部分、隠れフローになる部分を有効活用する方法を開発しなければならない。

リサイクルの罠
資源循環の観点から3Rが進められている。コンクリートの世界もご多分に漏れない。
再生骨材に関するASRはどうであろうか。
再生課程で未反応部分が表面に出て反応する可能性がある。
再生骨材中の反応ゲルにアルカリがあり、これがリサイクル材に紛れ込んで、それこそアルカリのリサイクルになりかねない。
再生粗骨材に関し、ASRを生じないようにJISのしばりがある。
H規格高品質再生骨材にあっては、(1)原コンクリートの配合報告書、解体記録などにより原骨材の全てが岩種を特定出来ること。(2)原骨材の全てが試験成績書または反応試験で無害と判定されること。(3)再生骨材が反応試験で無害と判定されることの3つを満たさなければならない。

スラグ骨材
高炉スラグはASR反応が生じないとされている。
フェロニッケルスラグには反応性を持つものがあることが研究で明らかにされている。
したがって、JISではフェロニッケルスラグ、銅スラグ、電気炉酸化スラグ、焼却灰溶融スラグの試験方
法などが示されている。使用実績が少ないものは用心して使うことになる。

ガラス系骨材
建築では、砕いたガラスをコンクリートに埋め込んでオブジェにするなどがある。
土木では、歩道のブロックに使われるなどがある。
廃ガラス由来の骨材に関しては、ASR反応が様々に異なることが研究で明らかにされているし、ペシマムがあることも確認されている。
無色や有色、含有金属類が多種であることが理由であるが、研究が進んでいるとは言い難い。ガラスからのアルカリ溶出については検討し尽くされていない(ガラスはゆっくりと溶ける材料である)。

課題
日本の地質状況から考えて、ASRの反応鉱物は各地に分布していると考えられる。
目視・観察だけで、ASRの可能性、残膨張量、ペシマムなどが判断できればよいが、コアを採取して膨張試験を行ったり、リム観察したり、EPMAで分析しているのが現状である。
コア採取は構造物を痛めかねないので、弾性波などによる非破壊検査が早急に実用化されることが望ましい。これに関しては、緒に就いたばかりという状態である。
ストックされたコンクリートに関し、材料や配合関係の資料をデータ化することが望まれる。
新設コンクリートに関しては、産地・産出場所を絞って岩種鑑定することが大切である。
多くの技術者がASRに関心を持ち、理解を深めることが重要である。
一般市民が、ASRなどのコンクリート劣化に関心を持って、通報してくれることが発見率向上に寄与するばかりでなく早期のメンテナンスを可能にする。この仕組み作りも大切である。
ASRはやっかいな劣化であるが、早期に発見し維持管理すれば、突然に構造物が崩壊する事はまれである。巨大地震の来る前にコンクリートの劣化調査が進むことを願う。
インフラを造る時代から使いこなす時代になり、メンテナンスに対する意識が高まって来たことをチャンスとして使いたいものである。(u.yan)