コンクリート診断士受験(択一問題)対策

 コンクリート構造物がどのようにして造られているか概要をおさらいして下さい(
コンクリートのボードの左ページ側を流し読み)。その上で、講習会テキスト基礎編を読み直します。2回読めば理解度が高まります。
 また、早川光敬先生(東京工芸大学 工学部建築学科)が簡潔に書かれた
Webマガジンe-コンクリートコンクリート工業新聞(セメントジャーナル社))のコンクリート構造入門は参考になります。コンクリート診断士を受験される方は技術者ですから読む必要がないのでしょうが、一読されて下さい。耐震、免震、制震の使い分けが確実になるメリットもあります。

1)施工不良(初期欠陥)・経年劣化・構造的変状
 変状の姿、色、ひび割れ等を覚えます。特徴を覚えるのがポイントです。
発生原因とその対策を種類別にまとめます。「
耐久性判定調査項目及び変状原因」の”基本的な考え方”と”変状の種類と原因”を参考にして下さい。

2)ひび割れ
 ひび割れの原因と
ひび割れの特徴を掴みます。
「耐久性判定調査項目及び変状原因」の”ひび割れ発生の原因”を参考に、項目毎にひび割れ姿を書いてみると理解が深まります。
 ひび割れの発生時期による区別は、
・打設後数時間:沈下やブリーディングに起因するもの
・打設後数日:水和熱に起因するもの
・打設後数年以上:中性化、塩害、アルカリシリカ反応に起因するもの

3)変状
 ・
中性化
 ・塩害
 ・アルカリシリカ反応
 ・化学的侵入
 ・凍害
 ・火災
少なくともこれらの変状の特徴、原因や劣化過程、評価・判定は覚えましょう。その上で対策を覚えます。ノートに箇条書き出来るまで頑張ってみましょう。
コンクリートの”細孔構造”や”フリーデル氏塩”、鉄筋腐食に関わる”不動態皮膜”や”マクロセル腐食”はキーワードとして説明出来ますか?

4)鉄腐食(錆汁)
腐食やアノード、カソードの理解は、少なくとも
鉄腐食の電子的説明図が描けることです。
コンクリートの中の鉄筋が腐食していく過程を箇条書き出来るようにして下さい。
→参考文
不動態皮膜の存在、鉄と酸素の結合、腐食生成物による体積変化、ひび割れとコンクリートの剥落、錆汁---一連のメカニズムを説明出来るようになって下さい。
鉄筋の錆は下面から始まることが多いです。再振動によるブリーディング水除去の有効性を如実に表してます。

5)色(汚れ)
 変状に伴う色の変化を箇条書きで覚えます。
白はエフロレッセンス。黒はカビ。酸による黄色化。
火災による変色は温度と関係しますので「
耐久性判定調査項目及び変状原因」の”変状の種類と原因”の汚れ(変色)を見て下さい。
鉄錆は”鉄錆色”を参考にして下さい。

6)調査方法
 各変状に特徴的な調査方法を覚えます。
特に中性化、アルカリシリカ反応、塩化物イオン量、鉄筋腐食の電気的測定方法、コンクリート強度測定については確実に覚えます。
耐久性判定調査項目及び変状原因」の”耐久性調査”を参考に記憶をチェックしてください。
似たような名前や試験がありますから、長所短所や決め手となる数字を表にして覚えるのが良いです。
代表的な非破壊検査方法は適用と合わせ覚えます。

7)数値
 発錆塩化物イオン量、アルカリシリカ反応対策としてのアルカリ総量は暗記します。等価Na2O換算式も暗記します。過去問を解けば覚えます。

8)数式
 ・中性化予測式:ルートの中は年数。開きにくい数字にならないはずです。
 ・累積疲労損傷度式:繰返し数の10のべき乗表示に注意。
 ・塩化物イオンの浸透速度はフイックの第二法則(拡散方程式)。速度は時間の平方根に比例。
練習に過去問を解いておきます。

9)対策・補修方法
  1.浸透工法、2.表面被覆工法、3.ひび割れ注入工法、4.断面修復工法、5.電気化学的工法に大別し、ポイントを箇条書き出来ればOKです。
対策工法の採用は原因と劣化程度、今後の供用期間がポイントになります。
電気科学的手法は脱塩、再アルカリ化、防食とありますから、表を作って覚えると分かりやすいです。極性を忘れないように覚えましょう。
ひび割れの大きさと補修の要否は耐久性からみた場合と防水性からみた場合で違います。

10)今後の劣化予想(将来性能予測)
  現在の性能を把握することが予想のスタート。
要求性能を満たすための要素、現地の劣化環境からチェックすべき要素、この2方向から把握すべき項目が分かるはずです。
(a)補修・補強前の性能を定量化(数値化)する。
(b)補修・補強による性能向上を数値化する。
(c)補修・補強後の性能を数値化する。a+b=c
(d)今後の供用に必要な性能を数値化する。
cとdの差が手入れ後の予想対象となります。
数値化(定量化)することなしに精度の高い予想は出来ません(ポイントです)。
構造物の性能は時系的に低下していきます。性能が数値化されていますから確率論的に低下する性能を弾き出しグラフ化します(LCC算定の根拠です)。
経時により劣化する性能をdまで持ち上げるタイミングや必要な費用の推算をします。LCCです。時間と性能低下の関係が分かっているので、いくつかのパターンを考え、比較検討の上、最適なものを選択します。
対費用効果がハッキリしますので、供用中止や解体撤去・更新の判断がしやすくなります。更新によるCO2排出や資源使用に関しての考察はしなければなりませんが、長寿命化のために大きな費用を使うことが適切でない場合もあります。
以上の論理的推定を記録することで将来に備えると共に情報の水平展開を行います。
情報を共有することで推定の正しさや修正が必要なことが分かります。現地環境の数値化が進み、劣化確率の精度を上げることも出来ます。

以下は受験の小テクニック的なもの
11)発想の転換
 外ケーブルは緊張材であるから、曲げモーメント図のような姿で使えば外力による歪みを打ち消すと閃けば簡単に解ける問題があります。

12)基本を押さえる
 高炉スラグには潜在水硬性がありますが、高炉セメントは普通ポルトランドセメントより中性化しやすいと判っていれば直ぐ解ける問題とか、リチウムイオンがアルカリシリカ反応抑制に効果があることを知らなくとも、アルカリ分や促進効果がある塩化物イオンがアルカリシリカ反応に良くないことが判っていれば解ける問題があるように、講習会テキストにある基本知識で解ける問題があります。ASRによる鉄筋破断が河口にほど遠くない橋梁で生じてます。

13)再劣化
 補修した箇所が、短期間に再び変状するのが再劣化です。
・マクロセルによる旧部分の鉄筋腐食(腐食電流による)
・注入材、塗膜材の追従性不足や劣化(想定した現場環境との差異)
・錆除去不足などの補修ミスに起因するもの(交差部の錆除去は手間のかかる作業です)
・ASRによる残膨張
が考えられます。

14)コア採取
 コア抜きに関する問題(2003年-16)。コンクリートに限らず、元々の性状を可能な限り保って採取するのが鉄則です。掘削を過度に急ぐと熱による影響が出ます。コアの先端に加わる力が強過ぎればブレも出やすくなります。先端の刃を冷やし、切粉排出に水を使うコアカッターでは状態が変わる場合は、ドライカッターを使います。

15)過去問題
 過去問題をおさらいしましょう。 7割以上取れるようであれば合格が見えてくるはずです。
参考:私はセメントジャーナル社の「コンクリート診断士試験完全攻略問題集」(宣伝ではないです)の過去問を2年分やりました。
ちなみにですが、十河先生は素敵な方です。